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【連載:バックヤードウルトラ①】限界まで数日間走り続ける競技を知っていますか? 私が「共走」に魅せられた理由

2026年1月28日
数日間にわたって「1時間に6.7km」を繰り返すバックヤードウルトラ。
写真は2023年の「Backyard Ultra Last Samurai Standing 2023 東京」(撮影/石山匠)

「1時間で6.7km走る」ことを身体の限界まで繰り返す、バックヤードウルトラという競技をご存知でしょうか。近年国内外ウルトラランナーの間で人気が高まりつつあります。この競技に魅せられて脱サラ、大会に参加するだけでなく自身でも大会を企画、さらには普及活動も行っている水野倫太郎さんがその魅力について綴る連載がスタートします。


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「自分はどれだけ長く走れるのか?」
フルマラソンや100㎞マラソンで自己ベストを目指すことにある程度満足し、ロードランニングからトレイルランニングへ。さらにその先でたどり着いたのは、自己最長距離への挑戦でした。ただただ自分の限界を知りたくて「バックヤードウルトラ」という聞きなじみのない世界に足を踏み入れたのは、2023年11月のことです。

バックヤードウルトラは、2011年にアメリカで誕生した新しいランニングの一形式で、とある酔狂なウルトラランナーの「裏庭」で行われたのがその名の由来です。ルールは単純、「1時間に6.7kmを走る」「参加者が最後の1人になるまで、それを繰り返す」。つまり、あらかじめ定められたゴールはなく、最後の1人を除いて走れなくなるまで走り続ける。まさに限界への挑戦という言葉がぴったりのレース。日本では別名「ラストサムライスタンディング」とも言われ、ロードやトレイルを問わず、変態ランナーたちが参加するイメージを持たれています。

私が初参戦した2023年11月の「Backyard Ultra Last Samurai Standing 2023 東京」も、名立たるウルトラレースの優勝者たちを含む30名ほどが集結していました。真剣勝負、そんな緊張感ある雰囲気でスタートしたものの、走れば走るほど、不思議な感覚に襲われることになりました。バックヤードウルトラにおいて、速く走ることはあまり重要ではなく、6.7㎞を40分で走ろうが、59分で走ろうが、次の時間の00分00秒には、また一斉に再スタートを切ります。先行逃げ切りは起こりえない。速く走れば、休憩時間は長くとれますが、その分、身体への負荷も増し、後々命取りになる。多くの選手は、キロ7~8分のスローペースでレースを進めていました。しかも、終わりが決まっていない長丁場。自然と会話が生まれ、会話を重ねるほどに、情が生まれ、気づくと、他のランナーたちは、ライバルではなく仲間になっていたのです。競い合うよりも、共に一周でも多く。競走よりも共走、そんな感覚に陥り、心地よささえ覚えました。

私の初挑戦は、70時間469㎞で幕を閉じました。最後の1人になったのではなく、最後に残った2人で共にやめた。お互いに勝負に徹することができず、走りながら話し合った末のことでした。勝利は手にしませんでしたが、幸運にも翌年の日本代表の資格が得られました。そして、バックヤードウルトラという競技の深みにはまっていくことになります。

その後、2度の日本国内の大会を経て、2025年6月にオーストラリアの大会で94時間630㎞を走り、10月にアメリカで開催される世界選手権を走ることに。不思議なことに、記録が伸びやすい海外の大会こそ、共走の色が濃くなります。オーストラリアの大会では、250名以上が集まり、まだフルマラソンも走ったことがないようなランナーから、前世界記録保持者まで。多様で、懐が広く、温かい時間が流れていました。アメリカで開かれた世界選手権では、約40か国のランナーたちが、言葉の壁を超えて「走ること」で通じ合う体験を共にしました。

バックヤードウルトラが、過酷なだけの競走、耐久レースだったなら、こんなにも魅了されることはなかったでしょう。共走とは何か?私のこれまでとこれからの経験を基に、バックヤードウルトラの知られざる世界をお届けしていきます。ぜひこの連載への"共走"をよろしくお願いします。


みずの・みちたろう(写真/野田倖史郎)

<プロフィール>
みずの・みちたろう
プロウルトラランナー。1995年生まれ。神奈川県秦野市在住。バックヤードウルトラを主戦場に、2024年、2025年、日本代表として世界選手権に出場。自己ベストは 94LAP/約630km。
活動の軸は、走ること・伝えること・つくること。『走るはつなぐ』『共走』をテーマに、「丹沢ループス」「バックヤードウルトラ神奈川大会」等のイベント企画やバックヤードウルトラのドキュメンタリー上映会・ポッドキャスト配信にも精力的に取り組む。2026年は海外バックヤードを転戦予定。(写真/野田倖史郎)



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