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【ランナーズ編集部ウラ話】知られざる「審判員」の世界

2024年5月02日
マラソンや陸上競技の大会は「審判員」がいて成立している
マラソンや陸上競技の大会は「審判員」がいて成立している

ランナーの皆さん、「陸連公認」って何のことか分かりますか?大会に参加されたことのある方なら聞いたことがあるかもしれませんが、陸連とは「陸上競技連盟」の略で、陸連公認とは大会の記録を陸連が正しい記録として認定してくれる仕組みのことです。

分かりやすく言えば、山の上からひたすら坂道を下っていくマラソンで世界記録を更新したらちょっとずるい気がしますよね?そこで、マラソンを含めた陸上競技には公平な競走を行うためのルールが設けられています。そして、ルールに則って競技を実施するためには「審判員」が必要です。今回は編集部の山本が陸上競技の「新B級公認審判員」資格を取得する研修に参加してきましたので、知られざるその世界についてご紹介します。


どうしたらなれるのか

まず、審判員になるには日本陸連に登録する必要があります。登録は団体もしくは個人で都道府県陸協を通じて行い、だいたい年間5,000円程度です(窓口によって異なる)。さらに、毎年2~4月頃に講習会が開かれるので、都合のつく日程を選んで参加します。講習会の内容は都道府県によりますが、私が登録している東京陸協では午前・午後で2時間ずつの計4時間、講義を聞いたり小テストを受けたりといった内容でした。ちなみに受講料は2,000~2,500円程度で、受講は資格更新のために毎年必要です。

講習会が終わると実技研修に移ります。基本的には登録している陸協が開催する陸上競技の大会に出向き、そこで審判見習いのようなことをします。東京陸協の場合は研修対象の大会が年間スケジュールの中で指定され、2年間で4回参加すれば「B級」の審判員資格が得られます。実技研修に受講料は必要なく、会場までの交通費を負担するだけでOKです。また、東京陸協では昼食も支給されます。


審判員に必要なもの

審判員は服装が決まっています。白いシャツにネクタイをして、パンツはグレーのスラックス。上着は黒または紺のジャケットを着て、専用の帽子をかぶります(夏場は白のポロシャツでOK)。審判員になるとこれらを全部購入しないといけないのかと思ったら、意外にも購入するのは帽子だけで良いそうです。手持ちの服で間に合わせられるので、遠目に見ると統一感があるように感じる審判員の服装も、近くでよく見るとバラバラなのは新発見でした。


どんなことをするのか

陸上競技の大会とロードレースでは違いもありますが、イメージしやすいものはマラソン大会や駅伝などで選手がコースアウトしていないかなどを確認する「監察員」や関門管理、陸上競技大会ではスタートのピストルを打つ「スターター」、タイムと着順を決める「写真判定員」などでしょうか。

他にもハードルや跳躍種目のマットなどを準備する「用器具係」、エントリーされた選手の出欠を確認する「競技者係」、フィールド種目でファウルの有無を判定したりする「跳躍審判員」「投てき審判員」などもあります。挙げればきりがないので詳細は割愛しますが、全体としては競技会を正しく、公平に遂行するために人員が配置されているという印象です。

シューズのミッドソールの厚さやスパイクピンの長さ、ウエアのロゴの大きさなどをチェックするのも審判員の仕事


どういう人が審判をやるのか

私の実感としては、審判員は『仕事』だなと思いました。そのくらいに時間と体力を使いますし、それでいてほぼ無報酬。じゃあ何のためにやるの?と思ったら、審判員の先輩方は「自分の責任によって大会が進行していくのが面白い」と言います。

東京陸協で審判員をやっている方は陸上経験者が多いですが、市民ランナーが選手として陸連登録をして、審判員をやっている人に誘われて始める……というケースも多いのだそうです。ただし、審判員も高齢化が課題となっており、パッと見渡すと目立つのは50~60代。41歳の私は完全に若者扱いです。会社を定年退職して時間がある方などは、審判員をすることで世の中に貢献している実感が得られるのかもしれません。「大会が終わった後に仲間と飲みに行くのが楽しい」と言っていた方もいましたが、それも一つの真理かもしれないと思いました。


審判のやりがいとは?

私は陸上競技歴が今年で30年目となり、業界でもそれなりに陸上好きなほうだと思いますが、それでも最初は審判員のやりがいというのがあまりピンときませんでした。レースを楽しむなら審判員ではなく観客としてスタンドにいるほうが明らかに見やすいですし、わざわざ審判員をするメリットが感じられなかったのです。

それでも、研修が進むにつれて少しずつ面白さも分かってきました。ウォーミングアップを終えた選手がやってくる招集所のピリピリした空気。目の前を猛スピードで駆け抜けていくランナーの息づかいを感じられる周回記録員。だんだん自分では感じ取れなくなってきた昔の競技者だった時の感覚を、審判員という立場になることで思い出せるような気がしました。あるいは、自分が経験できなかった世界を目の前のアスリートが少しだけ体験させてくれるような、そんな特別感が味わえるのが審判員の特権なのかもしれないと思いました。

審判員は長く続けていくとB級からA級、S級とランクが上がっていき、より大きな大会を担当できるようになります。来年は東京で世界陸上が開催されるため、審判員になればマラソンの沿道管理などで出番があるかもしれません。この機会に皆さんも審判員の仲間入りをしてみませんか?
(ランナーズ編集部 山本慎一郎)



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