ランナーズonline
RUNNERS ONLINE
左から古川大晃さん、近藤秀一さん、三津家貴也さん、オンライン参加:福田裕大さん
写真/軍記ひろし |
ランナーズ5月号で掲載された「走る研究室」の誌上討論。
現在発売中の6月号では「理想のランニングフォームは?」などをテーマにした誌上討論の後編や実践編を掲載。
今回はその中から「市民ランナーに科学的トレーニングは必要か?」を紹介します。
俺たち「走る研究室」前編はこちら
編集部 皆さんは市民ランナーに科学的知識を届けるために公開ディスカッションをしているとのことですが、そもそも市民ランナーに「科学的トレーニング」は必要なのでしょうか?
三津家 前提として、僕はエビデンス(科学的根拠)をもとにしたものが科学的トレーニングだと思っています。僕自身、大学時代は1回も自己ベストが更新できず、大学院で論文をもとに練習するようになってから自己ベストを7回更新し、科学的トレーニングの効果をすごく感じました。だから市民ランナーの方にも必要かなと。
古川 僕も「夕方に高強度トレーニングをしてその後は炭水化物をとらず、翌朝ロングジョグをする」という論文に基づいたトレーニングで1万mの自己ベストを更新したことがあります。
近藤 逆に科学的ではないトレーニングとは?
福田 根拠がなく「面白そう」とか「何となく」と興味本位でやるものではないでしょうか。
古川 エビデンスに基づいたトレーニングが科学的トレーニング。そしてそれは市民ランナーにも有効だということですね。
三津家 そうですね。市民ランナーは家庭も仕事もあって、練習に多くの時間を注ぐことができない。だからこそ効率よく練習することが走力アップのカギで、それには科学的トレーニングが有効ではないでしょうか。
編集部 たとえば「1km×5本」というトレーニングをするとして、科学的な根拠を意識した場合とそうでない場合の効果は変わるのですか?
三津家 もちろんです。1km×5本で「このトレーニングは心拍数を高く保つと効果的」と分かっていたら休息時の心拍数も意識できますが、漫然とやっているだけでは、必要以上に休息を長くして、本来得たかった練習の効果とは違ってしまうかもしれません。
近藤 僕は科学的トレーニングが万人に必要とは思っていません。たとえば走り始めたばかりの人は科学的なプログラムを組むよりも、毎朝30分走るだけの方が速くなる気がします。一方で、トレーニングは内容を信じて前向きな気持ちで行うことが大切です。トレーニングの「科学的根拠」を知ることで気持ちがより前向きになっていく、という側面があることは事実です。
三津家 ランニングコーチをしながら感じるのは、仕事で活躍している人ほど科学的なロジックを説明するとやる気になってくれる、ということです。
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走る研究室とは?
東京大学大学院博士課程2年で今年の箱根駅伝学生連合メンバーの古川大晃さんが発起人となった、大学院などで研究経験を持つ現役ランナー4人の集まり。「市民ランナーにランニングに役立つ知識を提供する」ため、2020年からSNS上で「きつさとパフォーマンスの関係」「厚底シューズ」などをテーマに公開ディスカッションしている。
古川大晃
東京大学大学院博士課程2年。九州大学大学院から昨春に東大院へ。2021年箱根駅伝予選会で88位に入り、学生連合メンバーに選ばれた。2月27日の大阪マラソンで2時間17分37秒の自己ベスト。
近藤秀一
GMOインターネットグループ所属(※)。東京大学4年時に学生連合で箱根駅伝1区出走。卒業後は実業団に所属しながら大学院で「乳酸と競技力」の研究を続けた。2020年日本選手権5000m出場。フルマラソン2時間14分13秒(2017東京)
※2022年4月末をもって退部されました
三津家貴也
ランニングコーチ、モデル、体育講師、インフルエンサーなどの活動を行うマルチタレント。高校時代は800mでインターハイ6位。筑波大学大学院を経て社会人になってから800mで日本選手権出場。フルマラソン2時間32分35秒(2021Beyond※非公認レース)。
福田裕大
ソフトウェア開発企業経営。金沢大学在学中は5000mや1万mなどで北信越学生記録を計5回更新し、出雲駅伝、全日本大学駅伝に出場。学生時代からランニング関連のアプリを開発。1万m28分52秒、マラソン2時間18分46秒(2021びわ湖)。
現在発売中のランナーズ6月号では「市民ランナーがフルマラソンで記録を伸ばすためにはスピードトレーニングも重要か」など誌上討論の全文を掲載しています。
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