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林 健さん(51歳)
埼玉医科大学 国際医療センター 神経内科・脳卒中内科 教授 医学博士 |
都内から車で約1時間30分、埼玉医科大学国際医療センターの外にはプレハブ病棟が建てられている。ここに新型コロナウイルス患者が入院している。
足元は黒いミズノのランニングシューズ、白衣をまとっているのは、本病院で新型コロナウイルス患者の治療にあたる医師、林健さん(51歳)。本誌定期購読者(ランナーズ+メンバーズ会員)だ。
東北大学医学部出身で、専門は「神経内科」。脳卒中やアルツハイマーなどの病気に携わる。神経内科を選んだ理由は「人と喋るのも人間文化を作るのも全て脳。他の臓器にはない面白さがあるため」だという。
埼玉医科大学は県からの要請により、関連病院全てで新型コロナウイルス患者を受け入れている。林さんが所属する同大学国際医療センターには「感染症」を専門にする医師はただ一人。そのため内科系の医師がローテーションで、新型コロナウイルス患者の治療を担当している。
「不要な接触は最小限にしていますが、防護服を着て直接診ることもあります。コロナが重症化していくのはやはり、高齢者や基礎疾患を持っている方々。(現場にいる立場からしても)ランニングなどの運動を行って健康を維持することの重要性を、今改めて実感しています」
ランニングを始めたのは9年前。運動不足とストレスを解消することが目的だった。最初は3km走ると疲労困憊だったが「遠くに行きたい」という気持ちがモチベーションとなって続けると5、10、20kmと走れる距離が延びていった。
「平日は埼玉で暮らして、週末に栃木県下野市の自宅に戻ります。いつからか週末にランニングをすることが、楽しみになりました。逆に天気予報を見て土日が雨だとガッカリ」
リアルのレースに出場した経験はなく、今年1月に「ランナーズ+メンバーズ」に入会してからはほぼ毎週末、「TATTAサタデーラン」に出場。GPSウォッチを初めて購入したのも今年1月「TATTAサタデーランでタイムを計測するため」だ。
平日は「外来」「回診」「医学部の授業」「研修医の指導」の連続で、寝床は病院内。関わるのは患者、研修医、医学部生、大学や民間企業の関係者と幅広い。土曜の診療を終えてから車で帰宅、夕方に近所の田んぼ道でTATTAサタデーラン「ハーフマラソンの部」に挑む。
「誰もいない自分だけのスタートラインに立つと緊張感が高まります。心の中で『ヨーイ、ドン』と合図を出してスタート。そこからは呼吸をゼィハァさせながら全力疾走。タイムが良ければひとり喜び、悪ければ悔しがる。毎週のタイムに一喜一憂しています。コース沿いに人はいないので、原則マスクは付けていません」
日曜は早朝から20~30kmのジョギングを行い、日中は家族と過ごした後、夜、職場に戻る。冒頭のプレハブ病棟を横目に見ながら車を停めると次は「医師」としてのスタートラインに立つ。
「病気を治すには〝体力〟が必要。走ることの重要性を実感しています」
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