※本記事は『ランナーズ2023年9月号』掲載内容になります。
フルマラソンが速くなるための、新たなアプローチがありました! 走っている最中のストライド(歩幅)が伸びれば自然とタイムは上がるのです。大会にエントリーした全てのランナー、必読です。
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もし今の筋力、心肺機能のままストライドがあと1cm伸びたら……そんな想像をしたことはないだろうか。ストライドがたった1cm変わるだけでも、フルマラソンでは大きな違いとなる。ピッチが1分間で180歩の場合、フルマラソンでストライドが1cm伸びると、4時間前後のランナーは2分28秒、3時間前後のランナーは1分24秒速くなるため、サブフォー付近であればその5倍となる5cm変われば約12分、サブスリー付近は約7分の違いだ。
たとえばフルマラソンの自己ベストが4時間4分9秒の永見俊也さん(36歳)の場合は、1歩のストライドは90cm、1分間あたりのピッチが192歩。ストライドがあと2cm伸びれば3時間58分となり、サブフォーに手が届く。4時間2分2秒の上野和之さん(59歳)も、ストライドがあと1cm伸びれば3時間59分台。ピッチは167歩とゆっくりであるため、タイムの伸び幅に少し違いが出る。
「ストライドを伸ばすことなんてできるのだろうか……」と思う人もいるかもしれないが、筑波大学陸上部の弘山勉駅伝監督は「少しの工夫で3〜5cmはすぐに伸びます。しかも、筋力というより骨盤の動かし方などのテクニックなので、高齢のランナーでも改善可能ですよ」と語る。ここから紹介するトレーニングを実施してストライドが1cm伸びれば目標達成がグッと近づくはずだ。
永見俊也さんの場合(現状90cm・4時間4分9秒)
※永見さんのピッチ(192歩/分)で計算
上野和之さんの場合(現状104cm・4時間2分2秒)
※上野さんのピッチ(167歩/分)で計算
GPSウォッチを用いると自身のピッチやストライドがすぐに確認できる
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ストライドが1cm今より長くなったら、「4時間2分28秒」までのランナーがサブフォーを達成できる。これを22年度全日本マラソンランキングに当て合めると、新たに2366人がサブフォーランナーになる。また、ストライドが1cm長くなれば、「3時間1分24秒」までのランナーはサブスリーができる。22年度マラソンランキングでは524人が該当する。
(※「全日本マラソンランキング」本誌7月号別冊付録より試算)
フルマラソンの日本記録は2021年に鈴木健吾選手が樹立した2時間4分56秒。鈴木選手のピッチが1分間に195歩だとすると、ストライドをあと6cm伸ばせば世界記録の2時間1分9秒を上回り、2時間0分45秒となる。ちなみに、2時間を切るためにはさらにあと2cmが必要。
男子マラソン世界記録保持者のキプチョゲ選手が自身のピッチ(187.5歩/分)で走ると仮定した場合、2cmストライドが伸びると、計算上は1時間59分53秒でサブツーを達成する。
昨年4月の長野マラソンを4時間7分4秒で完走し、マラソンランキング86歳の部1位だった小口親司さんは、ストライドがあと3cm伸びればサブフォーを達成できる計算となる。小口さんは今年の長野も4時間10分22秒で完走しており、今もサブフォーを目標にしている。ストライドの伸び次第では達成可能だ(※ピッチは1分間180歩で計算)。
6月25日のサロマ湖100kmウルトラマラソンで6時間6分8秒の日本新記録を打ち立てた山口純平選手は、ストライドがあと1cm伸びれば6時間3分37秒となり、6時間5分35秒の世界最高記録を上回る。もしも3cm伸びれば5時間58分39秒と6時間切りが可能だ(※ピッチが190歩での計算)。
速度の違いはピッチではなくストライドの差
「坂道走や砂浜走、スピード走が有効です」解説/榎本靖士(筑波大学准教授)
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なぜ速くなるためにストライドを伸ばすことが重要なのか。筑波大学でバイオメカニクス(生体力学)を研究している榎本靖士准教授(50歳)に、ランニングフォームとストライドの関係について解説してもらった。
フルマラソンでランナーはどのくらいのストライドとピッチで走っているのか。それを調べるためにカシオ製センサーを用いて2017年のつくばマラソンで91人を対象に計測しました(グラフ参照)。それによるとサブスリーグループの平均値はスピードがキロ3分42秒、ストライドは1.41m、ピッチは1分間に192歩。サブフォーの平均値はスピードがキロ4分50秒、ストライドは1.14m、ピッチは1分間で182歩でした。ここから分かったのは、走る速度を上げていく時に大きく変化するのはストライドだということです。ピッチも上がっては粋ますが、スピードに比べるとあまり大きくは変化しません。速いランナーとの違いは、ストライドの差なのです。
ストライドは、離地距離+空中距離+接地距離からなる
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ただ、一言でストライドと言っても、重要なのは空中に浮いている距離(空中距離)です。脚が地面に着いている間に進む距離はスピードにさほど関係なくほぼ一定なので、ストライドを広くするには空中距離を伸ばすことになります。ちなみに、トップ選手のストライドとピッチを調査した際、スピードの速い短い種目のほうが空中距離が伸びてストライドは広くなっていた一方、ピッチはフルマラソンの時とあまり変わらず、ストライドによってスピードを上げていると分かりました。
ストライドを伸ばすには股関節にある腸腰筋の強化が有効です。調査の結果、ケニア人選手は日本人よりもストライドが大きく、そして腸腰筋が発達していることが分かりました。熱心に筋トレをしたのではなく、起伏に富んだ不整地を走って自然と鍛えられたのだと分析しています。
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腸腰筋とは大腰筋と腸骨筋などの総称
腸腰筋とは股関節にある「大腰筋」「腸骨筋」などの総称で、上半身と下半身をつなぐ役割を持つ筋肉のこと。ランニングではストライドとピッチの両方に深く関わっている。
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