※本記事は『ランナーズ2025年3月号』掲載内容になります。
写真/軍記ひろし
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2023年度の全日本マラソンランキングでは、サブフォーランナーは8万6815人、全完走者のうち27.4%にあたります。サブフォーはキロ5分41秒で42.195kmを走り切れば達成できるタイム。走行距離が少なかったり、ジョギングだけで達成してしまう人がいる一方、ロング走やスピード練習をして走り込んでいるのに、届かないランナーもいます。当企画では、そんな「努力しているのにサブフォーができないランナー」がどうすれば4時間を切ることができるのかを解決していきます。
12月7日に東京・味の素スタジアムとその周辺コースで開催された、サブフォーを目指すランナーのためのフルマラソン「Challenge 4 TOKYO 2024」。1人でも多くの人に4時間切りを達成してほしいという思いから、2023年に誕生した大会だ。24年のレース当日は、晴れで風も弱いという絶好のコンディションに恵まれた。
午前10時にランナー486人が走り出し、フラットな5周回コースで距離を重ねていく。3時間50分、3時間55分、4時間それぞれに複数人のペースメーカーが配置され、ランナーに細かくアドバイスや励ましを送る。それぞれの集団は徐々に絞られていったが、離されてしまったランナーにも応援団からは熱烈な声が飛ぶ。
先頭のランナーが3時間13分でフィニッシュすると、3時間40分ごろから、続々とランナーがゴールに飛びんできた。結果的に、フィニッシュした379人中220人がサブフォーを果たし、完走者における達成率は58.0%となった。
3時間55分23秒だった柳田洋さん(50歳)は「フル3回目で3連続サブフォー。市民ランナーとしてサブフォーは一つの目標なので、走るからには達成したい。このレースはみんなが同じ目標に向かって走るので安心感がありました」
3時間58分52秒で初サブフォーだった持木達矢さん(53歳)は「ランニング歴5年でこれまでのベストは4時間25分。今回は「ASICS Running Program」(当レースのオプションで申し込める練習メニュー)で30㎞走を月2回程度積み重ねたのが良かったのかもしれません。苦しい時は会場が音楽で盛り上げてくれて、頑張ろうと思いました」
他方、絶好の機会を逃して悔しがるランナーたちも。4時間13分55秒だった根本健男さん(54歳)は「ベストは出ましたが、ペーサーにつけたのは31㎞まででした。2回行った30㎞走をレースペースで走り切れなかったのが、響いたかもしれません。サブフォーはいつかやりたい目標です」
4時間0分25秒だった安富貴久さん(48歳)は「初めて歩かず完走できたけれど、1分弱届きませんでした。『ASICS Running Program』メニューをこなしてその成果が出ましたが、トイレに1回行ってしまいました」
ここからは、このChallenge4で4時間切りを逃したランナー2人を分析します。
| 大会名 | Challenge 4 TOKYO 2o24 |
| 出走者数 | 486人 |
| 完走者数 | 379人 |
| 完走率 | 78.0% |
| サブフォー | 220人 |
| サブフォー率 | 58.0%(完走者) |
きちんと練習しているのにサブフォーできないランナーが4時間を切るためには何が必要なのか。Challenge4で目標達成を失敗してしまった2人のランナーを分析すると、多くのランナーに共通する「サブフォー達成に必要なこと」が見えてきました。
「突っ込み癖を解消したい!」
岡奈津子さん(49歳・走歴15年) |
◎Challenge4: 4時間16分23秒
◎ベスト: 4時間7分26秒(名古屋ウィメンズ2024年3月)
◎月間走行距離: 150〜190km
◎主な練習: 週1回スピード練習(1km×5本など)、2週に1回20〜30km走、週2〜3回ジョギング。趣味で週1回ウエイトトレーニング
◎悩み: 最初に突っ込みすぎてしまって後半失速する。5km24分30秒で走れるのにマラソンでキロ5分40秒が楽に感じられない
「体重が重いのが課題です!」
小形司さん(54歳・走歴8年) |
◎Challenge4: 4時間23分24秒
◎ベスト: 4時間4分28秒(東京チャレンジマラソン2024年1月)
◎月間走行距離: 100〜200km(10月のみ278km)
◎主な練習: 週3回、7〜10km程度を5分20秒〜5分50秒のペースで。週末は15km前後。大会1カ月前に20〜30km走
◎悩み: レース終盤胃が気持ち悪くなりジェルやスポドリを受け付けなくなる。給水でペースが乱れてしまうと集中力が途切れてしまいがち
今回、サブフォーしたいランナーとして協力いただいたのは、走歴8年の小形司さん(54歳)と走歴15年の岡奈津子さん(49歳)。いずれも2024年に4時間一桁の自己ベストを出しているが、Challenge4では4時間10~20分台と失速。それぞれに現状を語っていただいた。
「これまでは後半失速を繰り返していました。10月は278㎞走り込んだのでChallenge4は30~40%の確率でサブフォーできると思っていましたが……。レースではいつも20㎞以降に胃腸が気持ち悪くなってしまって、そこからは水もジェルも受け付けません。普段のジョギングはほぼレースペースで走っています」(小形さん)
「走歴は長いのですが、21年に4時間20分で走れたことで、サブフォーを目指してスピード走やロング走もするようになりました。24年は秋に5㎞を24分30秒で走れたものの、マラソンだとキロ5分40秒が速く感じて脚がキツくなってしまい、スピード持久力が不足しているのではないかと思います。また、前半をキロ5分20秒ぐらいのペースで突っ込んでしまう癖があるのも悩みです」(岡さん)
【アドバイスをいただいた指導陣】
・高野千尋さん: ランニングサイエンスラボマネージャー。日本大学で箱根駅伝に2度出場し、実業団にも所属した。
・山本正彦先生: 桜美林大学健康福祉学群教授。ランニング学会理事。専門は運動生理学。大学のコーチや実業団アドバイザーも経験している。
・大角重人コーチ: 株式会社イチキロ代表、ランニング・フィジカルコーチ。早稲田大学では主務を務めながら箱根駅伝に出場した。
文/若林有美
まず、2人とともに訪れたのは東京都渋谷区のジム「ランニングサイエンスラボ」。ここで、呼気ガスを取りながらトレッドミル上を走ることでフルマラソンの予測タイムや最大酸素摂取量(VO2max)※1、ランニングエコノミー※2などのデータを取ってもらうことができる。そして、2人のマラソン予測タイムは「岡さん・3時間50分23秒」「小形さん・3時間57分58秒」といずれもサブフォー可能という結果だった(データは下に記載)。それでは、なぜ2人は4時間が切れないのだろうか。
測定を担当してくれた高野千尋さんは「データ上はサブフォー可能でも、実際には当日の体調や気象コンディションも絡んできます。今回のデータでは2人とも同じような強みと弱みが表れていましたが、気になったのはランニングエコノミーの低さです。それぞれ後半の失速を課題に挙げており、効率の良い走りができていないからこそ、失速につながってしまっているのかもしれません。実は『練習会に多数参加して頑張っている』『ジョギングがほぼレースペース』などの市民ランナーはこの傾向が表れやすいです」
では、どのような対策を取ればいいのだろうか。「一番取り組みやすいのは低強度のジョギング量を増やすこと です。ゆっくり走るジョギングを増やせば、ランニングエコノ ミーは改善する可能性があります。全体の走行距離が変えられない場合も、今まで練習の7割ポイント練習3割がジョギングだった人なら、それを逆にするだけでも効果がありますよ」
※1……1分間に体内に取り込むことができる最大の酸素量のこと。運動生理学では、70ml/kg/分のように、体重1kg当たりに何mlの酸素が摂取できたかで表される。値が大きいほど、心肺機能の能力が高いと言える。
※2……あるスピードで走った時の酸素摂取量のこと。同じスピードでもランナーによって酸素摂取量は異なり、少ないほど効率が良い走りと評価される。
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・測定方法: 呼気ガスを測るマスクをつけてトレッドミル上を走行。アップ後にマラソンペースで5分間走ってランニングエコノミーを測定。休憩後は徐々にスピードを上げながらオールアウトまで走る。
| 被験者 | 項目 | 数値・得点 |
|---|---|---|
| 小形さん | 予測タイム | 3時間57分58秒 |
| VO2max | 54(得点4) | |
| AT水準 | 88(得点8) | |
| ランニングエコノミー | 268(得点1) | |
| 岡さん | 予測タイム | 3時間50分23秒 |
| VO2max | 52(得点3) | |
| AT水準 | 87(得点8) | |
| ランニングエコノミー | 247(得点1) |
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