※本記事は『ランナーズ2026年7月号』掲載内容になります。
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本誌50年の歩みを様々な切り口から振り返る連載。
「継続できるスピード走」をあの手この手で提案し続けてきました。
文/栗原直也、編集部
「市民ランナーはとかくインターバルが嫌いだ。インターバルのような苦しい練習は、一流選手がやるものでわれわれには関係ないと思っている人も多い。ところがそれは大きな誤解なのである。自分のレベルに応じた正しいやり方で行えば、インターバルはそんなに苦しいものではない。毛嫌いせず、ぜひ取り入れてもらいたい。その効果は、秋のレースにはっきりと現れてくるはずである」
これは1989年9月号「この夏はショートインターバルでスピードアップ」の一節。そう、市民ランナーにとって、インターバルをはじめとする「ゼエハア」息を切らして疾走する「スピード走」を行うことは、なかなかハードルが高い。「苦しい」ことが容易に想像できるからだ。それでも本誌が50年間、繰り返し「スピード走」を取り上げてきたのは、少しでも速くなりたいと思うランナーにとって、やはりその効果は絶大だからだ。
本誌に初めて「スピード走」が登場したのは、創刊年である1976年の10月号。以来、あの手この手で、市民ランナーが「これならできそう!」と思えるスピード走を伝えようと試行錯誤してきた。上に並べた見出しは、その軌跡だ。99年の連載「マラソン真剣勝負!」では、福島県立田村高校陸上部監督(当時)の下重庄三さんが「距離さえ踏めば、フルマラソン完走は可能ですし、記録もある程度までなら短縮することができるでしょう。しかしそこからレベルアップするためにはスピードトレーニングは大変有効なトレーニングと言えます。その最大の理由は、レース前半を、余裕をもって走ることが可能になるからです」と語った。
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01年5月号では「苦しまないスピードトレーニング」が登場。大阪教育大ジョギング教室講師(当時)の佐藤光子さんが「スピード走がきついというのは、全力疾走しなければならないという誤解からきているのではないか。競技選手と違い市民ランナーのためのスピード走の目的は、『ゆっくりのジョグだけではできない大きなフォームで走ること』『レースペースの体得』の2点。フルを走るためのトレーニングを前提に考えると、フルのレースペース(目標ペース)+α程度のスピード出力で十分(3時間30分なら1㎞5分ペース)」と説いた。
14年の「スピードで遊ぼう!」では、筑波大学の鍋倉賢治先生がスピード走に慣れるためにまずは「ジョグの中に50mダッシュを取り入れる」ことを提案。ダッシュのたびにグリコーゲンが多く消費され、その後のジョグの効果が高まる(脂肪をエネルギーとして利用する能力が高まる)と解説した。
18年には、「普段のジョギングより」「目標とするマラソンのレースペースより」1秒でも速く走る「1㎞ちょっぴり頑張る走」を提唱。研究者の得居雅人先生はその効果を「身体の動きが大きくなることによって、お尻や大腿部といった『大きな筋肉』やジョギングでは使われることがない複数の筋肉が使われ(=鍛えられ)スピードや筋力の最大値が向上。マラソンの30㎞以降、筋肉が疲労した状態の時にこれらの筋肉を働かせることができると、失速を最小限に留めたり、ペースを維持させることができる」と語った。頑張らなくても勝手に脚が動いてスピードアップできる「下り坂走」も、繰り返し提案してきた。21年の「今春は下り坂を駆け下る」では、本誌お馴染み岩本能史コーチが「心肺機能に負荷をかけずにスピードが出せ、平地の何倍も楽に自分の限界に近いスピードが出せる」と持論を展開した。そろそろ「思い切りスピードを上げて走りたい!」とムズムズしてきたあなた。身軽なウエアで外へ飛び出しましょう!
LSDの実践法と理論を解説した著書「ゆっくり走れば速くなる」(ランナーズ・ブックス)の中でも、
スピード走によって「身体に揺さぶりをかける」ことの効果に言及している |
スピードプレイは、字義どおりスピード遊びのことで、ガムシャラにスピードを上げるのではなく、全速力の中にも常に「遊び」的余裕を持たせるランニングである。
たとえば3セット、5㎞、4㎞、3㎞でいくと決めたら、その総距離12㎞を最初ジョギングで行って、スピードプレイで帰って来るように設定する。各セットの距離は、調子次第でもっと短くしてもよい。ボクの場合、最初のジョギングは超スロー。大体1時間から1時間半、じっくり汗が出て身体がムズムズし、スピードを上げたくてしょうがなくなるまで、じっとガマンの子。ただ、ポカポカ陽気の春の日、桜並木の間を走っていたりしたら、もういけない。とても1時間もがまんできず、ジョグを早目に切り上げることは往々にしてある。それも良いのだ。
1セット目、最初の5㎞でスピードをスポンと上げてしまうのではなく、まずはジョグの延長、そして徐々に徐々に、風に乗って、気分に乗って……「よし、オレのフォームはいま最高だ。他人が見たら、さぞ格好良く見えることだろう」と意識しながらいく。あるいは別のときは「なんとなくギクシャクしているな。ウーン調子もいまひとつだ。もっと自分ではいいつもりだったんだが……」なんてことももちろんある。
スピードプレイで大事なのは、自分との対話だ。いいときもあり悪いときもある自分の体調の打診、腕の振り、足の上がり、呼吸の方法など技術的フォームの点検と是正をしていくこと。そして感覚のリフレッシュメント。
2セット目の方がやや立ち上がり(スピードの入れどき)が早い。1セット目の反省を頭で反復しながら走る。初々しい緑の木々や、川向こうの美人に目を止めるのは往きのジョグのとき。スピードを入れているときフル回転するのは、ただただランニングに関する「頭」だけだ。しかし、いつの場合でも、もうこれ以上は速く走れないというオールアウトまで追い込んではいけない。最高でも80%までにとどめておこう。
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