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2万人が85km以上を駆け抜ける! 世界最大最古のウルトラマラソン コムラッズマラソン①

2026年7月01日

※本記事は『ランナーズ2026年9月号』掲載内容になります。

南アフリカで毎年6月に開催されている85~90㎞のウルトラマラソン「コムラッズマラソン」をご存じだろうか。1921年に第一次世界大戦での戦没者を追悼するために、同国のピーターマリッツバーグからダーバンまでを34人が走ったのがその始まり。
開始から100年を超える現在では、2万人以上が参加する世界最大・最古のウルトラマラソンとなり、沿道では数十万人が応援するといわれる南アフリカの国民的行事だ。第99回となった今年の大会をレポートする。


コムラッズマラソン(85.777㎞)


出走者数 2万349人
完走者数 1万8276人(完走率89.8%)
制限時間 12時間
男子優勝 George Kusche(5時間15分56秒〈大会新記録〉)
女子優勝 Gerda Steyn(5時間44分53秒〈大会新記録〉)

写真/Tobias Ginsberg、編集部



出走記
きつすぎるコース、情熱的な応援、雄大な景色
「The Ultimate Human Race」


本誌編集長の行場竹彦が、コムラッズマラソンの出走記を綴りました。

太ももは重くなり、走り出しても30秒程度でまた歩いてしまう。「この坂は永遠に続くのではないか?」との思いも頭をもたげてきた。コムラッズマラソンUPRUN 最大の難関として名高い終盤(80km付近)の上り坂「Polly Shortts」で、私はかつてないほど失速していた。
世界最古のウルトラマラソンとして知られるコムラッズマラソンへの出場を決めたのは昨年7月。100km元世界記録保持者で、2019年にこのレースで3位に入った風見尚さんに誘われたことがキッカケだった。
エントリーと航空券の手配を済ませ、記録を狙っていた東京マラソンも終わった今年3月に改めてコースを調べて驚いた。UPRUN の今回はスタートよりフィニッシュが600m高く、最大高低差800m、累積標高1800m。しかも、こんなコースの85km以上を先頭集団は平均キロ3分40〜50秒で走り抜けている。慌てて峠走など対策を始めたものの、上位進出は諦めて「30位以内で完走する」と目標を切り替えた。


踊りながら道路を横切る観客たち

日本から飛行機を乗り継いで27時間、レース3日前に南アフリカ・ダーバンに到着した。インド洋に面し、暖流があるため現地は冬の6月でも暖かく、昼には25℃を超える日もある。現地の食事やEXPOを楽しみ、あっという間に当日を迎えた。
市街地にあるスタートラインにつくと国歌が流れてランナーたちが大声で合唱。そして、『炎のランナー』のテーマ曲や録音された雄鶏の鳴き声が響き渡り、合図とともに一斉に走り出した。


スタートの午前5時はまだ暗く、足元が不安な中走り続ける。とりあえず行けるところまで上位集団についていく作戦である。上りが始まると、早くも脚が重い。現地のランナーは余裕そうに話しながら走っている。最初のエイドで、水(コップではなくビニール袋に入っている)は沿道から手渡しで受け取ることに気づく。この時は暗くてよく見えなかったが、約2kmごとにエイドがあるので、次はうまく受け取れた。ビニールは意外と飲みやすい。それにしても、沿道にいる人々のテンションが高い。楽しそうに声を出したり踊ったりしていて、ついこちらも笑顔になってしまう。

コースは長い上りが続いたかと思えば、時折急な下りがやってきて、走りの切り替えが難しい。コムラッズにはBIG5hill と呼ばれる5つの厳しい坂がある。そのうち2つ目の難所、20km過ぎから約3km続くFields Hill を上り切ったころ、周りが明るくなってきた。「ザ・アフリカ」というような、雄大な景色が目に飛び込んできて感動した。

この時点で太ももはパンパン。3つ目の難所はなんとか乗り越えたものの、レースの中間点付近にある4つ目の難所Inchangaで集団に離されてしまった。「まだ残り約40kmある。ボロボロになるのではないか」と不安になったが、長い下りを挟んでやや回復。平坦な箇所では前のランナーを徐々に追い抜かしていき、「15番ぐらいでゴールできるかも」と前向きになってきた。

しかし、その後は時折厳しい上り坂が表れ、「甘かった」と実感しながら脚が棒のようになっていく。76km付近の坂で一度歩いてしまい、冒頭のように、最大の難関Polly Shortts では完全に心が折れた。

それでも身体は現金なもので、頂点が見えてくるとゆっくりながらも走り出すことができた。背中を押してくれたのはやはり応援だ。こちらの応援はとにかく自由で、道路まで出て間近で声援を送ってくれる。名前が書かれたアスリートビブスを見て「タケシコ! タケシコ!(ヒがうまく言えないらしい)」と連呼してくれることもしばしば。バーベキューをしながら応援している人や、踊りながら道路を横切る人もいて、応援自体がレクリエーションになっているようだ。さらに、終盤フラフラになっている私を見かねたのか、いきなり脚に鎮痛スプレー(?)を振りかけられた。

単独で走っている私1人のために全力で応援してくれるのを見ると、少しでも速く走りたくなる。下りを迎え、残り3kmを切ってからは元気になり、声援に手を振って応える余裕も出てきた。そうこうしているうちに残り1kmの表示。「早くゴールしたいけど、なんだかもったいない」と思ったのは初めての経験だ。最後の直線では左右からの歓声を受けて駆け抜け、5時間40分2秒(平均キロ3分58秒)の26位でフィニッシュした。

6時間を切ったランナー向けの完走メダルを受け取ると、途中で歩いてしまったことはどこかに飛んで充実感でいっぱいになった。前回100km走った時(2018年世界選手権)は「もうウルトラはいいかな」と思ったが、今回は「来年のDOWNRUN も走りたい」と思っている自分がいる。「TheUltimate Human Race(究極の人間レース)」と謳っているコムラッズマラソンは、想像以上に特別な大会だった。







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