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鰻を食べて、記録うなぎ上り! ―― ランナー勝負メシの新定番①

2026年1月01日

※本記事は『ランナーズ2026年3月号』掲載内容になります。

皆さんのレース前の勝負メシは何ですか? 編集部が調査したアンケートでは、レース前にうなぎを食べるランナーは21.1%(第3位)。
1位のご飯、2位のうどんは炭水化物をとるカーボローディングで一般的ですが、なぜうなぎが支持されているのか。専門家やランナーの声をお届けします。


フルマラソン前日の「勝負メシ」は?(複数回答可)

[対象]フルマラソン完走歴のあるランナー
[方法]e-moshicomでのアンケート調査
[期間]25年3月21日~3月31日
[回答]95件


うなぎ専門家ランナー対談
「うなぎは低酸素の深海を約2000㎞泳ぐ長距離ランナー」

うなぎの養殖・蒲焼き加工を手掛けるサブ3.5ランナーの山田信太郎さん(51歳)と、大正5年創業のうなぎ専門店店主でサブ3ランナーの柳生剛さん(53歳)が、ランナー勝負メシに「うなぎ」がお勧めである理由を語り合いました。
山田信太郎(やまだ・しんたろう)

山田水産株式会社代表取締役社長(大分県佐伯市)。近年はうなぎの骨からだしを取ったラーメンやうなぎ飯を提供する「山田のうなぎ うな骨ラーメン」を東京・築地にオープン。1974年生まれ。走歴14年。フル3時間25分44秒(25年東京)。

柳生剛(やぎゅう・ごう)
小松屋4代目店主・小松屋食品株式会社代表取締役社長(茨城県土浦市)。創業100年を超える佃煮とうなぎの専門店を営む。1972年生まれ。走歴15年。フル2時間43分34秒(24年勝田)。元ハンドボール部、月間走行距離400~600㎞。


ーーレース前日はやはり、ご自身もうなぎを食べますか。
柳生 勝負メシはうなぎと決めています。マラソンは自分を信じないとできないスポーツです。うなぎはスタミナ食ですから、「うなぎを食べたんだから大丈夫」という自信を持てます。

山田 私の場合、勝負メシでもあり、日常メシです。うなぎが好きでこの事業を始めたくらいですから。加工場の試食や取引先との会食が多いので3日に1回はうなぎを食べます。普段の仕事で食べるとビジネスモードに切り替わり、レース前に食べるとマラソンモードのスイッチが入ります。

ーーうなぎは精のつく食べ物と言われていますが、その点はいかがでしょうか。
柳生 創業から100年を超える小松屋の逸話ですが、髪が薄かった初代店主が90代になってから毎日、うなぎを食べるようになったら黒い毛が生えてきたそうです。年配のお客さんが疲れたときにうなぎを食べに来て、「おかげさまで元気になった」と言ってくれます。

山田 たんぱく質はもちろんですが、うなぎはビタミンB群やミネラルも豊富なので、栄養学的にも勝負メシとして理にかなっています。

柳生 私はうなぎに含まれるミネラルのおかげか、レース中に脚がつったことはありません。ビタミンB群は糖質を効率良くエネルギーに変えてくれるので、マラソン前の食事に最適です。また、運動パフォーマンス向上、疲労回復に効果があるイミダゾールジペプチドやBCAAも含まれているので、まさに理想の勝負メシです。



ーーレース前にうなぎを食べるタイミングは?
山田 前日の昼、ご飯を多めにして食べることが多いです。

柳生 同じく前日の昼です。夜に食べてもいいと思いますが、消化のことを気にされる方は昼がお勧めです。食べ合わせも大事で、小松屋では商品でもある奈良漬けを添えています。ウリに含まれている消化酵素が栄養吸収を促してくれます。

山田 昨年は100匹以上のうなぎを食べましたが、刻んだネギをかけ、温泉たまごを乗せたねぎ玉鰻丼がお勧めです。当社ではお店のメニューにもしています。さっぱりと食べられて、ネギに含まれるアリシンは胃腸の働きを助け、疲労回復にも効果があります。

柳生 私はレース後もうなぎを食べます。レース前はスタミナをつけるためにうなぎ、レース後は疲労回復のためにうなぎ、です。


小松屋の「うなぎ弁当」では、消化吸収を促す奈良漬けをセットにしている(写真/小松屋)
小松屋の「うなぎ弁当」では、消化吸収を促す奈良漬けをセットにしている(写真/小松屋)


山田水産直営「うなぎの駅(鹿児島県)」のメニュー「ねぎ玉鰻丼」。ねぎに含まれるアリシンが胃腸の働きを助ける(写真/山田水産株式会社)
山田水産直営「うなぎの駅(鹿児島県)」のメニュー「ねぎ玉鰻丼」。ねぎに含まれるアリシンが胃腸の働きを助ける(写真/山田水産株式会社)

うなぎは生まれてから2000㎞泳いで日本に来る

――勝負メシをうなぎと公言するトップ選手も多い印象です。
山田 精神面でのメリットも大きいと思います。昔からうなぎはハレの日の食べ物で、食べると気持ちがグッと上がる人が多いように思います。金融街、日本橋兜町界隈にうなぎ屋が多いのは「相場が上がるように」ということです。成田山新勝寺、柴又帝釈天、神田明神といった寺社の参道に軒を並べているのは、「運気うなぎ上り」という験担ぎのためでしょう。

柳生 小松屋では受験シーズンに「成績うなぎ上り」と謳って、合格祈願のうなぎ弁当を販売します。小松屋の隣が学習塾なので、お迎えの父母が買ってくれます。

山田 うなぎは強い魚だと思います。日本のうなぎは西マリアナ海嶺周辺で生まれてから約2000㎞も泳いでくるんですよ。しかも酸素の薄い深海の環境です。うなぎこそまさに「長距離ランナー」です。

柳生 さばく工程で頭を切り落としても口はパクパクしているのを見ると、生命力の強さを感じます。

山田 自社の加工場でうなぎを選別しているとき、下に落ちてしまっても床が濡れていればバタバタと進んでいきます。生命力のある魚ですから、食べると元気になります。レース前に食べない理由が見つかりません。

ーー編集部の勝負メシアンケートではうなぎを食べるランナーは21.1%でした(第3位)。
山田 遠征先の大会では、思ったものを食べられないことがあるので、そういう条件下での21.1%という数字を見ると、こんなに食べてくれているんだと思います。と同時に、一度は勝負メシとして食べてみてほしいという願いがあります。

柳生 近頃は近隣のかすみがうらマラソンやつくばマラソンに限らず、土浦から距離のある水戸黄門漫遊マラソンの前日も、店が満席になることもあるので、ランナーの勝負メシとして認知されつつあるのかなと思います。ただ正直にいえば、もう少し増えてもいいのかなと感じました。

山田 うなぎは日本が誇る食文化であり、勝負メシです。当社ではアスリートには勝負所で食べてもらいたいので「鰻サポート」を行っています。陸上の資生堂や肥後銀行、十種競技の右代啓祐選手、ラグビーのクボタスピアーズ船橋・東京ベイにうなぎを送っています。海外から日本のマラソンに来るランナーにはぜひ、うなぎを食べてレースに出て快走してもらいたい。そういうカルチャーができるといいですね。

文/吉田誠一







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