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川内優輝がインタビュー 40年連続サブスリー達成者登場! 「唯一得意なスポーツへの強い執着心」①

2025年3月01日

※本記事は『ランナーズ2025年5月号』掲載内容になります。

今年2月の別府大分マラソンで、当時59歳だった日吉一郎さんが2時間59分27秒でフィニッシュし、40年連続サブスリーを達成した。日吉さんは何故これほどの長い間サブスリーを継続できたのかマラソンを2時間20分以内で100回以上走破し、ギネス記録保持者である川内優輝選手が質問した。
写真/小野口健太 取材、文/近藤雄二


日吉一郎さんと川内優輝選手
日吉一郎さんと川内優輝選手

40年連続サブスリー達成者
日吉一郎(60歳)
ひよし・いちろう
早稲田大学2年時に同好会で陸上競技を始める。1985年11月の河口湖が初マラソンで、翌年に初サブスリー。これまでにフルマラソンを88回完走し、うち81回でサブスリーを記録。自己ベスト2時間34分54秒(2006年別大)

2 時間20分切りギネス記録保持者
川内優輝選手(38歳)
かわうち・ゆうき
プロランナー。学習院大学在学中に箱根駅伝に2回出場。埼玉県庁職員だった2018年にボストンマラソン優勝。これまで100回以上フルマラソン2時間20分切りで走り切っている。自己ベスト2時間7分27秒(2021びわ湖


サブスリー対談

――日吉さんは先日の別府大分マラソンで40年連続のサブスリーを達成されました。川内さんから見ていかがでしょうか。

川内 日吉さんの記録継続の一番のポイントは、やはりケガをしないことですよね。脚の故障などで走れなくなったことはほぼないと。自分自身がこの1年故障に悩まされているので、そのすごさを強く感じます。私も15年連続で続けていた「2時間20分切り」を昨年途絶えさせてしまいました。特に心臓手術から復帰した2022年にも継続できたのがすごいですよね。

日吉 そもそもなぜ走り続けているかというと、大学時代に遡ります。私は中学高校と運動がずっと苦手でした。体育の時間も足を引っ張っている感じで。それが、大学2年で陸上同好会に入ったら半年後の初マラソンで3時間4分で走れて2回目でサブスリー。『20年生きてきてやっと得意なスポーツに出会えた。これをやっていこう』と思えたんです。

川内 私も球技はダメで短距離も遅かったので、その気持ちはよく分かります。高校で故障ばかりしていたのに大学でも長距離走を続けたのは、やめたら自分には何が残るのかという、恐怖心があったからなんです。

日吉 川内さんもなんですか!? 社会人になってからは時間もなさそうだし、さすがに走れないかなとも考えたのですが、卒業記念の別府大分マラソンで2時間35分台まで記録が伸びた。そこで、この唯一の得意スポーツは社会人でも続けようと、強い執着心が持てました。


川内 とはいえ、お忙しい時期もあったのではないですか?

日吉 はい。私は卒業後大手銀行に入行し、忙しかった時期は日付が変わった夜中に走っていました。午前0時30分前に帰宅したら1時間走るのがマイルールでしたね。忙しいからやめるのではなく、寝なければ走れるじゃないかと。そこまでできたのは、私もマラソンが無くなったら自分に何が残るのかという強迫観念があったからです。なかなか自己ベストが出せず、特に93年から8年近くは、別大の標準記録(当時)2時間40分が切れなくて悶々としましたが、もう一度別大に出ることをモチベーションに頑張りました。

――年齢を重ねて、自分に合った新しい走り方が見つかるようなことはありますか。

日吉 これまで92回マラソンを走ってきて、一番思い出に残っているのが久々に別大の標準記録を切った99年のつくばマラソンです。スタートで後ろの方に並んでしまい、本来は18分のつもりだった最初の5㎞を19分近くかかったんです。それを維持していたら当時失速していた20㎞を過ぎても5㎞18分半ぐらいでいけました。その結果、2時間39分12秒で走れて、ああ、こういう走り方があるんだなという発見がありました。

川内 私の場合、エリートのレベルアップが激しいので、とにかく速くないとレースについていけない。周りに合わせないといけない状況になっています。

日吉 13年の別大では、川内さんは2時間8分15秒の大会記録で優勝されましたね。あのレースは、私も後ろの方を走っていたんです。ちょうど60回目のサブスリーを達成した大会でした。

川内 私は09年の別大が初マラソンなんですけど、この時も一緒に走っていたんですね。日吉さんは、私の生まれる1年前からサブスリーをしているんですから、歴史の積み重ねがすごい。


「15年連続で続けていた2時間20分切りを昨年途絶えさせてしまった。すごさが分かります」(川内選手)



日吉 ただ、40代から走り始めた人に抜かされることもありましたし、還暦を過ぎてもサブスリーを続けている人はやっぱり、ちょっと遅めに走り出した人が多いんですよね。

川内 でも40歳から走り出した人が40年連続サブスリーしようと思ったら、80歳まで継続しなといけませんから。私の初マラソンと日吉さんの初サブスリーは同じ21歳で、日吉さんも私も早くマラソンを始めたからこそ、回数や年数という記録につながっているんですよね。サブスリーを100回、200回という話は聞いたことがあるけれど40年連続というのはやはりすごい。ギネス記録に申請しても通る可能性があると思います。

日吉 40年連続サブスリーという記録も、いつか川内さんに抜かされますよ。

川内 抜くとしても、少なくともあと20年以上は追いつけませんし、記録を伸ばし続けていただければ、それだけ追いつくのも遅くなりますよ(笑)。

日吉 なかなか難しいですけどね。還暦サブスリーというのは、思い描いてはいるんですけど。


【表1】川内選手の主なマラソン結果


大会名 記録 備考
2009年 別府大分マラソン 2:19:26 初マラソン
2011年 東京マラソン 2:08:37 初の2時間10分切り
2018年 ボストンマラソン 2:15:58 瀬古利彦さん以来の日本人優勝
2020年 防府マラソン 2:10:26
100回目の2時間20分切り
2021年 びわ湖毎日マラソン 2:07:27
自己ベスト
2023年 MGC 2:09:18 途中まで独走して4位

―― 定番の強化メニュー、調整練習などはありますか。
日吉 大学時代に同好会の先輩から教わりまして、週末30、40㎞などの長い距離を走った翌日に、スピードを出す5㎞走をやっています。以前の5㎞は17分半で走れたのですが、今回の別大前は19分台だったので、レースでもサブスリーがギリギリの感じでした。

川内 そのセット練ができて、故障しないのがすごいです。私の場合は、スピード練習の翌日などに長い距離を走る逆パターンが多いです。ロング走の翌日はスピードを上げきれないので。レース前の定番は、1000m10本のインターバル。その10本をきちんと走れるかどうかが、バロメーターになります。

日吉 川内さんとレベルは異なりますが、定番練習は、安心感につながりますよね。


夏まで仕事に集中秋からランニングを最優先

――40 年連続サブスリーのベースとなる健康維持の方法は。
日吉 走る時期と走らない時期が分かれていたことかもしれません。特に2000年台は異常に忙しく、別大の後は8月くらいまであまり走りませんでした。そのキッカケとなった01年は9月になってから本格的に走り始め、02年の別大では2時間37分台で走れてしまったんです。そのため、秋からで間に合うと考えるようになりました。

川内 夏までとそれ以後も業務量は変わりませんよね。それでも秋からは走れたのですか。

日吉 そこは適度に仕事の手を抜くというか(笑)。ストレスもすごかったので、走ることがストレス解消につながっていました。先ほど言ったように自分にはこれしかないと考えて生活の中でランニングを最優先にしていました。逆に走らない期間は仕事に集中している感じで、メインの別大が終わった後はものすごく残業するんです。

川内 海外ではレースでピークを作った後、一旦しっかり休むランナーも少なくありません。それを20数年前から実践していたおかげで、しっかりオーバーホールができて、故障を抑えられた可能性はありますね。





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