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暑さを味方につけて速くなる「夏を制する者は秋冬を制す」①

2026年6月01日

※本記事は『ランナーズ2026年8月号』掲載内容になります。

河川敷を走るランナー
河川敷を走るランナー
写真/小野口健太、川上糧

本誌が創刊した1976年、東京で7~9月に最高気温30℃を超えた日数は31日でした。一方昨年は、74日と2倍以上。夏の暑さはこの50年で様相を変えていますが、本誌が提案してきた夏のトレーニングの軸は変わらず「知恵と工夫をこらし、暑さを味方につけて夏ランを楽しむ!」です。今年も猛暑が予想されますが、50年分のノウハウを活かして、夏を楽しく乗り切りましょう。


地球温暖化に負けない!グラフ

真夏に滝汗をかいて「休眠汗腺」を刺激


サブスリー鍼灸師の柳秀雄先生(60歳)が、夏を迎えるランナーへエールを送ります。

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「暑さとの闘い」の季節を迎えたランナーの皆さん。秋冬のレースに向けて、夏は頑張りどころです。「暑いのは苦手だ……」なんて言っている場合ではありません。とはいえ昨今の暑さは尋常ではありません。そんな中で、どうやって頑張るか、が重要です。走る時間、場所、内容、暑さ対策。知恵と工夫が肝要です。私自身は新宿御苑や代々木公園、駒沢公園など、必ず木陰のある場所を選びます。そして100均で買った折り畳みバケツを持参し、練習後に水道で水を浴びてクーリングダウンします。昨今は11月や3月などのフルマラソンで夏日となることもあります。もはやこの時期のレースはそれも織り込み済みで挑まねばなりません。真夏に滝汗をかいて「休眠汗腺」(働きの悪くなっている汗腺)を刺激して発汗、放熱の機能を高める必要があります。

そうやって夏に練習を継続していれば、9月終わり、ふっと秋風が吹くようになる頃に「エビ反り急成長」が待っています。「エビ反り急成長」とは、まさにエビ反りのような急カーブで走力の向上を実感できるということ。「身体の動きが軽くなる」「夏は苦しかったレースペースを楽に感じる」という感覚です。私自身、夏の間はそれを心の支えにして走っています。実は昨年秋、私はその「エビ反り急成長」が始まった頃、足首に皮膚がんが発覚、オペを受けました。皮膚を植皮し、6週間全く走ることができませんでした。勝負レースと決めていた2月の別大は欠場。3月末のふくい桜マラソンで、ようやく1年ぶりにフルを完走しました(3時間20分)。

今年は12月の防府でサブスリーを狙います。昨年味わい損ねた「エビ反り急成長」を味わえると思うと、これからの夏のトレーニングが楽しみでなりません。
夏を制する者は、勝負レースを制す。楽しく、ときには激しく、そして安全に、夏ランを頑張りましょう!


過去の掲載記事1
過去の掲載記事2

「夏場は暑さとの戦い、自己との闘いである」
本誌が伝えてきた「暑さを味方につける」ためのトレーニングを振り返ります。

※本特集に記載の人物の肩書・所属は掲載当時のもの

あらゆるランナーの〝難敵〞

「暑さはチャンピオンを目指すランナーにとっても、また健康を目的とするジョガーにとっても、難敵である。夏場は暑さとの戦い、自己との闘いである。暑さを乗り越える精神を涵養し、創意工夫を忘れないことである」(1986年9月号/鐘紡陸上部監督・貞永信義)

暑さの度合いは変化すれど、今も昔もランナーの"難敵"であることに変わりはない。本誌ではその難敵にいかに向き合うかを様々な角度から伝えてきた。「暑い中トレーニングを行うメリットは?」「少しでも暑さを避けて快適に走るには?」「暑熱下で走る時の注意点は?」研究者やコーチの知恵と工夫を結集させた50年分のノウハウは、今年の夏も、あなたが「今日も走るぞ」と一歩踏み出す後押しとなるはずだ。

夏はゆっくりでも走力向上
「夏はジョギングでも息が上がる……」と嘆くランナーは多いだろう。しかし、「夏はゆっくりペースでも走力向上が期待できる」と教えてくれたのは、研究者の岩山海渡さんだ。

「持久的能力の指標となる最大酸素摂取量(VO2max)を高めるには、レースペースより速い高強度トレーニングを行うことが知られています。しかしある論文によると気温40℃では、軽いジョギング程度の運動(VO2maxの50%)でも、VO2maxやパフォーマンステストの成績が向上することがわかっています。この理由として考えられるのは、『暑さ』という環境負荷によって、軽いジョギング程度でも心肺機能への刺激が大きくなり練習強度が高くなること、そして、『暑さ』への適応反応(暑熱順化)として血液量が増加することです。血液量が増加すると心臓の一度の拍動で送り出す血液量=酸素が多くなり、それがVO2maxの向上につながると考えられます。また血液量の増加は発汗促進につながります。発汗は体内の熱を体外に排出することなので、体温調節もうまくできるようになります」(2018年8月号)


朝ランか夜ランか

暑さを避けて快適に走るためには、「いつ走るか」「どこで走るか」が大きな問題だ。
まず「いつ走るか」。日差しを避けられ、少しでも気温の下がる時間帯は朝か夜。2011年9月号「工夫次第で走力アップ!夏の楽しいトレーニング」では、朝と夜、それぞれの時間帯に走るメリットを比較している。

まず「早朝ランはスタミナアップに効果大」と説いたのは、東京工芸大の山本正彦先生。「朝ランは前夜の食事からの経過時間が長く、腹ペコランニングによるミトコンドリア増量効果が望める。ミトコンドリアは細胞内にあってエネルギーの発電所のような役割をしており、体内のミトコンドリアが増えるということはスタミナアップを意味すると言える。空腹状態で運動を行うことで細胞内のミトコンドリアの増加を促進する」

一方、「夜ランが筋力強化に最適な理由」を語ったのは和歌山大の本山貢先生。「人間の身体は、夕方になるとコルチゾールというストレスホルモンの発生が抑制される。このホルモンは、筋のたんぱく質の分解を促進する働きを持つ。つまり、夜と朝で同じトレーニングを行った場合、夜の方がたんぱく質の分解を抑えることができる。すると筋回復のスピードが早くなり、効率的に筋力を高めることができる。これは秋に向けての身体づくりとしてとても効率的と言える」

要するに、朝と夜、それぞれ異なるメリットがある。朝と夜、どちらでも走る時間をとれる人は、得られる効果から時間帯を決めると良いかもしれない。


涼を求めて、野山かジムか……

「どこで走るか」は住む場所によるところも大きいが、ランナーであれば「日影が多いコース」など夏用マイコースの選択肢を持っていることだろう。

本誌を振り返ると、70~90年代は「夏は休暇を利用し、思い切って涼を求めて野山や海へ走りに行こう」と誘う記事が多くみられる。1987年8月号では、野山でのクロスカントリー走を提案。"走る哲学者"として知られ"夏ランの巨匠"としても登場した山西哲郎先生は、その利点を「まず心が開放的になり、リラックスして走れること。心の自由は筋肉や神経の緊張と弛緩をスムーズにさせ、リズミカルにする」と説き、「真夏の太陽の下で、実際に身体を動かし、風を感じ、その日の暑さを体感する。そうすると、感覚が磨かれて、感性が豊かな夏のランナーになりますよ」と語った。

一方、近年は24時間ジムの増加などによって「スポーツジム」も身近な存在になっている。2024年7月号では「地球温暖化=猛暑にも負けないジムランで速くなる時代、到来!」を特集。ジム愛用者である本誌の行場編集長は「どんな天候でも練習ができるだけでなく、舗装路を走るよりも脚のダメージが少ないので高強度の練習を増やしても故障せずにトレーニングを継続でき、入会後にフルの自己ベストを更新した」と実体験からメリットを語った。
ときにはがらりと環境を変え、暑さと闘う身体をリフレッシュさせることも、夏を乗り切る上で大切なことだ。次の休暇はどこで走ろうか‥‥‥ちょっとウキウキしながら、計画を立ててみてはどうだろうか。

そうやって楽しみながら知恵と工夫を凝らし、夏もランニングを継続すれば、「やがて、光のまぶしさや暑さが気にならず、自らエネルギーが湧き出ることが感じられたとき、夏のトレーニングの成功を知るのである」(1986年9月号/山西哲郎)





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