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RUNNET TRAIL

トレラン・レースリポート

  • トレニックワールド 100mile & 110km in 彩の国

開催日:2016年9月3日(土)~4日(日)
開催地:埼玉県 越生町・ときがわ町・飯能市ほか
距離と完走者/出走者 
   100mile:0人/52人 完走率0%
   110km:50人/215人 完走率23.26%

楽しくも厳しい、大きな壁となったレース

リポート/RUNNETスタッフ・K

制限時間の33時間、目いっぱい走るつもりが、10時間で終わっちゃった、トレニックワールド in 彩の国 100mile。
初めての経験尽くしでとても楽しかったのでリタイア記を書いてみます!

まずは事前準備。実はこの大会に向けて、自分なりには頑張ってたんですよ。階段トレしたりスクワットしたり重りランしたり。で、それなりに仕上がったと思ってたんですよ。でも累積標高差9000m超、全長165km(55kmくらいを3周)という、UTMF並みのきつさに加え、制限時間33時間という厳しさ(ちなみに2015年UTMFは、距離約165km 累積標高差約7500mで制限時間は46時間)。
それでもまあ、トレイル率70%ちょいだし、2周、110kmくらいはきっと走れるだろう、あとはまあ根性だ、と思ってたのですが…。

そんな前フリと共に迎える、開会式。
日差しの照り付ける下ながら、冗談も交えた注意事項が続く。
「1周目10時間、2周目11時間、3周目12時間が制限時間です! 1回でもコースロストすると完走できないから気をつけて!」
というキビシイはずの言葉もなぜか、何となく和やかに聞こえます。
音楽やMCで盛り上げるようなお祭り的大会とは異なり、「あと5秒でスタートでーす」との声で、ゆるく、気負わずにスタート。こういう雰囲気、とてもアットホームでいいですね。

100マイルの参加者は52人。9月3日(土)9時にスタート
100マイルの参加者は52人。9月3日(土)9時にスタート
鬱蒼と茂る草木を抜けて…
鬱蒼と茂る草木を抜けて…

速めのペースでいったはずが…
最初から関門20 分前の到着でビックリ

100マイルなので、それなりにセーブして進む。でもコースもいい感じで楽しくなってきて、つい少し早目のペースにしてしまう。レース展開的には良くないですね(^_^;)
標高が厳しいこのコース、第1エイドにたどり着くまでに結構息が切れてしまった。
「うーん、頑張り過ぎたか……」という感じだったけれど、着いてビックリ。なんと関門20分前。
他のレースだったら、関門まで1時間以上あってもおかしくないペースだったはず…。

ここにきてようやく、「1周目10時間」という設定がどれだけとんでもないものか、実感する。
エイドはものすごく充実していて大満足だったけれど、ボランティアのおじさんに「食べてる場合じゃないよ」と言われてしまう。え、ええまあ、そうなんですけど、食べないと走れまへんの。
それでもエイドに長居はできないのは確かなので、早々に出発する。

第2エイドまでの区間はしかし、暑さによるダメージできつくなってきた。ガブガブ水を飲んでも、脱水ぽい感じに。これはまずいなぁ。
ペースを落とせばなんとでもなるのだけど、レースの初っ端からこんな関門ギリギリでは、落とせません。

ヒーコラ言いながら登り基調のコースを踏破し、何とか第2エイドへ。気をとりなおして、いなり寿司や、ちくわのキュウリ詰め、プルーベリーと、非常に充実した食べ物をありがたくいただく。
ここでは関門30分前だった。おお、少し貯金ができた、か……?この調子で進めば何とかなるだろう。しかし、、、

これ、ほんとに100マイルのペース?
加えて、ここに来るまでに何度もコースロストしかけてしまった。夜の部もこの調子だとすると、かなり気を付けないとロストしてしまうかもしれない。
不安を押し切り、次の区間へ。エイドの補給がまだエネルギーに変わっていないようで、ハンガーノックの兆候がでてきました。手先がビリビリしびれます。
グミを食べながら騙し騙し進む。この区間は下り基調なので、大分助けられました。

こんな瑞々しい場所も!
こんな瑞々しい場所も!

BBQ場と併設のエイド。お肉の焼けるにおいが、、、(笑
BBQ場と併設のエイド。お肉の焼けるにおいが、、、(笑

暑さのためスタッフに水をかけてもらっている人も!
暑さのためスタッフに水をかけてもらっている人も!


関門15分前で、まだ半分くらいしか
通過していない!

第3エイドにはすんなり到着。下りは得意なので結構良いペースで進めたのだが、到着は関門15分前。
え、、、貯金が減ってる!?
しかもなんと、まだ25人くらいしか通過していないらしい。関門15分前なのに……。
エイドのおじさんに「今、この場にいるだけでもエリートだよ」と言われる。
これは本格的にスイーパーのお世話になる予感がしてきました。
ただ、脚はしつこいくらいスクワットしてきたので、全然元気。暑さとペースの早さで胃腸はヤバイ感じだけど、まだイケる。

そして、第4エイドまでの区間。ここでは誰も抜かなかったし、誰にも抜かれなかった。
レースというより一人山行のような気分。あまりに誰もいないので、歌いながら進む(熊注意の看板あるし)。
ただ、コースはガレているところも多く、なかなかペースが上がらない。もしかすると、第4エイドでタイムアウトでは……
そんな不安と戦いつつ、何とか到着したのはギリギリ、関門10分前。なかば諦めかけていたので、ホッとする。

急な上り下りで歩かざるを得ない場所もかなりある
急な上り下りで歩かざるを得ない場所もかなりある


しかし一方、ここまでのレース展開で、心は折れかけていた。
脚はまだまだ元気なんだけど、 こんな序盤から関門とギリギリの戦いをしていて、本当に完走なんてできるのか……?
関門との戦いで、かなり心がすり減っていた。
「歩いてもゴールできる」が通用しない世界。
ここで第5エイド、すなわち一周目が終わるスタート地点に戻ったとして、次の2周目はコースロストの危険が大きい夜間、すり減った心で2周目11時間。

……これ、無理じゃね?
なんだか笑えてきた。
ここまで、トイレもなしでエイド以外はノンストップ。登りこそ歩いたけど、下りと平地は全部走った。それでも関門ギリギリ。
……これ、登りも走れるエリート選手以外お断りのレースだった?
人生初のリタイアが目の前に迫っていたけど、それはもう、全然悲しくなかった。
これは、しゃーないわ(笑)
このレースは第1回。初開催のレースは、いろいろトラブルがつきもの。それを乗り越えるのが楽しいんじゃない? と思って好んでいたのだけれど、これはあまりにレベルが違いすぎる。

直登や、急な下りを繰り返していると徐々に脚に疲労がたまって…
直登や、急な下りを繰り返していると徐々に脚に
疲労がたまって…


日が暮れるとペースが落ちてしまうかも…
せめて1周だけでも完走したい!

第5エイドまでの12km、残り2時間弱。しかもあと1時間でナイトに突入する。
もう、100マイルだから余力を残すとか、いいや。何とか一周目だけは完走しよう。
幸いなことにこの区間は下り基調だったので、ギリギリ間に合いそうなペースで進めた。

ただ、日が暮れると、予想どおりコースが本当にわかりにくくなった。ロストの危険と隣り合わせのため、得意の下りでもペースが落ちてしまう。これは、ヤバイかもなぁ……。
やっとのことでロード区間に入り、一周目のスタート&ゴール地点であるニューサンピア越生まで、残り2.5km。ギリギリいけるか……?

夜間になると持参したヘッドライトなどを着けて夜間装備となる
夜間になると持参したヘッドライトなどを
着けて夜間装備となる


関門に間に合っても間に合わなくても、多分、もうレースはきっと続けられない。あと110kmも関門と戦い続ける気力なんてない。体力は残っているけど、このまま頑張り続けたところで、このレースを完走できる未来が全く見えない。

ニューサンピア越生、19:02着。関門を2分オーバーでした。

結局100マイルはなんと完走者ゼロ。トップ選手でも110kmの関門にひっかかっていました。
今もレース展開を思い返しては、「無理、無理、www」と思い出し笑いしています。リタイアしたのにこんなに面白いレースがあるなんて。
こんなキビシイ体験を与えてくれたトレニックワールドに感謝です。第2回は負けないよう、もっと準備して臨まなければ!

注意しながら下る選手。夜間になると足元が確認しにくくなり、さらにペースを落とす必要がある
注意しながら下る選手。夜間になると足元が
確認しにくくなり、さらにペースを落とす必要がある
165kmのレースとは思えないほどハイスピードで進んだが55km地点でタイムオーバー。あまりのきつさに後から思い出しても笑いが出てきた。
165kmのレースとは思えないほどハイスピードで
進んだが55km地点でタイムオーバー。
あまりのきつさに後から思い出しても笑いが出てきた。

レースを終えて、最後に。

レース終了後。予定よりもずっと早い時間にリタイアし、その後の展開が気になって、他の参加者の奮闘を応援していました。
そうした頑張りを見たり、また、自分にとっては初リタイアという経験が思い入れを強くし、その後、選手やスタッフからのレース改善提案に関する意見募集にもずっと目を通していました。
参加している最中や、終わって暫くは「楽しい、楽しい」という気持ちばかりだったのですが、完走者ゼロという事実から運営の改善を求める声や、コース設定や調整、環境負荷に関する話など、様々な意見を読むにつけ、「楽しい、楽しい」だけで終わるべきではない、と感じています。
100mileレースは、日本ではほんの僅かしかありません。気候、コース、関係者との調整と、まさに天地人が揃わなければ運営も開催もおぼつかない、難しいコンセプトだからなのかもしれません。
ただ100mileやそれに類する距離を通してしか得られない感動が、喜びがあり、それは参加者の人生を変えるほどの力を持つものだ、と実感しています。
100mileレースの存続は人の人生を豊かにする。そう思うからこそ、このレースにはより良い運営でもって、山や地域を愛する人々の共感を持って存続して欲しい。そう願ってやみません。

(RUNNETスタッフ・k)





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