スポーツ栄養
SPORTS
|
味の素株式会社がアスリートの栄養環境を改善するために開発した栄養プログラム「勝ち飯®」。この連載ではランナーが知っておくべきバランスのとれた食事の重要性やメニューの考え方を紹介していています。今回はレースに向け、減量したい時の食事について考えます。ありがちな「炭水化物を抜く減量」はランナーにはお勧めできないと管理栄養士の柴田隆一さんは言います。ではどのような形での減量が望ましいのでしょうか? トップスイマーとして活躍した柴田さんに教えて頂きます。
「勝ち飯®」では1日3回の食事で「主食」、「主菜」、「副菜」、「汁物」、「牛乳・乳製品」の「5つの輪」をバランスよく食べることを基本としています。そのうえで減量を目指すのであれば、どれかひとつを抜くのではなく、「5つの輪」のバランスを保ちながら、少しずつ減らすことが理想です。「炭水化物を取らない」、「野菜しか食べない」といった減量は一時的に体重が落ちるかもしれませんが、ランニングのパフォーマンスを発揮しきれない可能性が高く、お勧めできません。「バランスよく少しずつ減らしていく」ことをまずは覚えておいてください。
健康的な減量の考え方として一般的なものは、通常の生活から「摂取カロリーの減少」と「運動によるカロリーの消費」を合計し、1日に500キロカロリーを減らし、1カ月続けていくと1キロの減量が可能といわれています。この500キロカロリーとはちょうどお茶碗1杯分です。「5つの輪」を少しずつ減らして欲しいとさきほど申し上げましたが、もし、日常的にごはんの量が多い方は、1食ごとにお茶碗で3割くらいずつご飯の量を減らせば、1日3回でお茶碗1杯分となり、500キロカロリー減ができます。ただこれは普段、ごはんを多めに食べている方のみが使える手段です。
食事によるカロリー減だけでなく、消費することを考えればランだけでなくランニング以上に消費カロリーが大きい「スイミング」をトレーニングに入れることも強くお勧めします。その分、水泳後は空腹感が大きいので、食べ過ぎないように気をつけてください。
減量はスタート時の体重や体脂肪率によってその幅は大きく変わってきますが、2カ月から3カ月かけて段階的に減らしていく計画を立てましょう。ランナーの皆さんは決して短期間で落とそうとしてはいけません。
またレースで好タイムを出すために、「体重」を減らしたいと考える方が多いと思いますが、私は「体脂肪」に目を向けて欲しいと考えています。体重は同じでも体脂肪が少なければ、それは筋肉量が多いということです。筋肉が多ければパフォーマンスにつながりますし、代謝が上がり、結果的に脂肪も燃焼されていきます。今は手軽に体組成を計測できますので、体重だけでなく、体脂肪の変化に目を向けることがパフォーマンスを維持しながら、体重を減らすことにつながると思います。
体脂肪を落とすにあたって、気をつけて欲しいことは3つの「あ」と覚えておいてください。それは「甘いもの」、「アルコール」、「あぶらもの」です。
甘いものの食べ過ぎや、アルコールを多く取ることは体重増加につながることはご理解いただけると思います。絶対に食べたり飲んだりしてはいけないということはありませんが、減量時には控えて頂くのが理想です。甘いものを食べるのであれば洋菓子よりも小豆などを使った和菓子が脂肪分が少なくお勧めです。
「勝ち飯®」の基本である「5つの輪」を維持するにあたって、気をつけて欲しいのが油ものです。「揚げ物」よりも「炒め物」のほうが油分は少なく、「煮物」、「蒸し物」にすれば油分をほとんど使わないため、カロリーや脂質の摂取を抑えられます。具体的に言えば「豚カツ」よりも「豚の生姜焼き」が望ましく、「豚しゃぶ」のほうがさらに望ましいと言えるでしょう。調理方法を工夫することで、カロリーや脂肪分の摂取を抑えることができます。
適正体重とは身長や年齢、その方の競技力などに応じて異なるため、一概に計算することはできません。そのため日頃から体重や体脂肪に目を向け、「どのくらいの値の時に、どんな感覚で走れるのか」と、パフォーマンスとの関連で自分の適正体重を見つけるといいと思います。日々の練習はもちろんですが、レースの時が特に重要です。時には無理のない範囲で実験的に体重が増えたり、減ったりした状態で走ってもいいかもしれません。そのうえでベストな体重を見つけてください。
(PART2につづく)
⇒ https://park.ajinomoto.co.jp/recipe/card/704830/
いつものごはんを発芽玄米ご飯に置き換えて、腹持ちのよい主食に!
|
⇒ https://park.ajinomoto.co.jp/recipe/card/710066/
減量中に甘いものが食べたいときに。低エネルギーおやつ。
|
⇒ https://park.ajinomoto.co.jp/recipe/card/710381/
具材を包んで焼けば完成。野菜も取れるおすすめおかず。
|
「勝ち飯®」とは?
味の素株式会社は2003年に日本代表選手およびその候補選手を対象とした国際競技力向上およびメダル獲得数増の為のコンディショニングサポート活動、「ビクトリープロジェクト®」をスタートさせました。その長期に渡るサポート活動の知見とスポーツ栄養学の裏付けにより誕生したのが、アスリートの栄養環境を改善するための栄養プログラム「勝ち飯®」です。「何を食べるか」ではなく、「何のために食べるか」を考えることを推奨しています。
⇒ https://www.ajinomoto.co.jp/sports/kachimeshi/
|
管理栄養士。2008年北京五輪に競泳日本代表選手として200mバタフライに出場。現役引退後は母校・日本大学のコーチングスタッフとして指導。2015年には管理栄養士の資格を取得し、スポーツにおける食の大切さを、自らの経験を加味して、多くのアスリートやジュニアアスリート・親へのセミナーを行う。