スポーツ栄養
SPORTSQuestion
走って免疫力をつけて、病気を寄せつけないぞ!と思っています。練習量を増やし、たくさん走れば走るほど免疫力は高まるのですか?
Answer
適度な強度のランニングを定期的に継続するのはOK。いきなり強度の高い運動をしたり、長時間や過度の練習、力を出し切ったレースの後は免疫力が落ちてしまいます。
回答者:深野祐子(管理栄養士・ランニングコーチ)
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――ランニングを始めて2年になります。風邪を引きにくくなったし、免疫力がついたなと感じています。さらなる強い身体作りを目指して、練習の負荷をどんどん上げてみようかなって思っています!
深野先生(以下F):おっと! 待ってください。実は、免疫力は練習をし過ぎると下がってしまうことがあるんです。
――えっ!?
F:免疫機能は、外部からウイルスや細菌が体の中に進入してくるのを防いだり、体内に生じた異物などを排除しようとする生体防御システム。適度な運動を継続することは免疫機能を活性化する、とされていますが、実は運動も過度に行うと免疫機能の低下につながってしまうんですよ!
――なるほど!!やりすぎもよくないのですね…! ランニングで免疫力をつけるなら、どのような練習がちょうどいいのでしょうか?
F:一般に「健康運動」として奨励されている負荷のトレーニングを定期的に継続することですね。走っていて「ラクだな~」と思えるような程度から、継続しているとちょっとキツい程度(最大酸素摂取量の50~70%程度)の運動を、1回20~60分、週に3回以上行うことで免疫機能の活性化につながるとされています。
――なるほど。それなら、今の私や仲間たちのトレーニングの程度に結構当てはまるかもしれません!
F:一方で…今まで運動習慣のなかった人や初心者がいきなり強度の高い運動をしたり、レースに向けてインターバル練習などの高強度のトレーニングやロング走などの長時間に及ぶトレーニングを行ったり、過度の頻度でハードな練習を行うのも、免疫力を低下させる要因になってしまうことがあります。力を出し切るような、レースに出た後もそうですね。
――確かに、レースの後などは全身に疲れが残り、体力が落ちて風邪を引きやすくなっていたかも……。あれは免疫機能が低下していたのか……!
F:そうですね。ハードなトレーニングを連日しているアスリートは免疫機能の低下を招きやすく、くしゃみや鼻水、喉の痛みなどの症状が出る頻度が一般人より数倍高いと言われています。マラソンのような過酷な持久性運動の選手にも、競技終了後2週間の50~70%で風邪症状が見られたという報告もあります。
激しい運動を行ったときの免疫指標を検証すると、免疫指標は一時的に大きく上昇した後で、運動前より低下した状態が続くことが分かっているのです。
――運動不足だった人が走る習慣を持つことで健康体になる話はよく聞きますが、やり過ぎてしまうと免疫力ダウンのリスクも出てくるということですね。
F:どんなに走っている人にでも、リスク因子はあるということですね。運動初心者ならなおさら、軽い負荷から少しずつ上げて、継続して運動していくことが大切になります。
――とはいえ、今よりは練習強度を上げて目標タイムに向けてトレーニングしていきたいのですが、どうしたらよいのでしょう?
F:もちろん、レースを目標にしているランナーは、どうしても長時間や強度の高い運動が避けられないですよね。大切なのはその「免疫力を低下させやすいレベルの運動を行っている」ということを自覚すること。自分の身体のコンディションを意識して整えていく必要があります。免疫力は、運動だけではなく、生活習慣も大きな要素になるからです。
――生活習慣!? 早寝早起き、などですか?
F:生活のリズムを整えるということですね。当たり前のことのように感じるかもしれませんが、実は免疫機能をしっかり働かせるためには大切なことなんです!毎朝、朝日を浴びること・朝食をとることで体内時計をリセットすること。3食バランスよく食事をとること。さらに食事をとる時間や、トレーニングを行う時間をできるだけ同じ時間に行うようにして体のリズムを作ること。就寝2~3時間前にはトレーニングや食事、入浴は終えて身体を休めること。寝る前にスマホやPCのブルーライトを目に浴びることも、質の高い睡眠を妨げる要因になります。
そして先ほどの練習頻度の話に繋がりますが、長時間、ハードなトレーニングを連日行わないことですね。回復のための時間を確保していくことも大切です。どうしても連日ハードな運動を行わなければならない場合は、より栄養補給や睡眠で素早いリカバリーを心がけましょう。
――栄養補給でも免疫機能を整えることができるんですね。
F:もちろんです!免疫機能をしっかり働かせるために、食事などからの栄養補給の方法を、次回で詳しくお伝えしましょう!
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