スポーツ栄養

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夏場もしっかり走り込むために(PART2)~いざ実践! 効率的な「冷却」が走りに効く!~

2021年6月30日

Question
夏の水分補給
毎年秋のレースに向けて夏の走り込みを試みるも、暑さに弱く、途中でバテてうまくいきません。解決策はあるのでしょうか?


Answer
普段の食生活からも「暑さに負けない身体」を作っておきましょう


回答者:深野祐子(管理栄養士・ランニングコーチ)


走る前に身体を冷やす「プレクーリング」を実践!

――前回「暑熱順化」について教えていただき、意識して走っています! 冷やしたドリンク入りのボトルを持参し、こまめに水分補給もしていますよ。

深野先生(以下F):良いですね! ところで、夏場のトレーニング前にしておくと良い暑さ対策があるのをご存知ですか?

——走る前に、ですか? キャップを被る、日焼け止めを塗る……。

F:そのような日差しの対策とともに是非しておくと良いのが、「プレクーリング」。運動する「前」に“内側”と“外側”から身体を冷やしておく、という考え方に基づく暑さ対策の実践方法です。

長時間走ることで過度に深部体温が上がってしまい、それが身体の負担となってバテてしまう、という夏場の身体の仕組みについては前回ご説明しましたね。つまり、運動前に深部体温をあらかじめ下げておくことで、トレーニング中の深部体温の過度な上昇を抑え、熱中症の予防、大量の発汗による脱水、パフォーマンスの低下も防ぐことができるのです。

——なるほど! 練習スタート時の深部体温の値を下げておけば、トレーニングでもバテにくくなる、より高いパフォーマンスが発揮しやすいということですね。具体的にはどうしたら良いですか?

F:身体を内側から冷却する方法としては「水分補給」が有効です。運動を始める20~40分前に、スポーツドリンク(5~15℃ほどのもの)を250~500mlを摂取してください。一度に大量にではなく、何回かに分けて少しずつ摂取すると身体への吸収もスムーズです。脱水対策としても、スポーツドリンクによる電解質の補給はとても大切ですから。また、シャーベット状の氷飲料(スポーツドリンクで作成されたものなら糖質・電解質の補給にも)を飲み、運動前に身体を冷却する方法もあります。

それと、スポーツドリンクには、『アイソトニック』と『ハイポトニック』の2種類あるのをご存じですか?

——『アイソトニック』と『ハイポトニック』…??

『アイソトニック』飲料は安静時の体液と同じ浸透圧に、『ハイポトニック』飲料は安静時の体液よりも低い浸透圧に設計されています。
走る前には、ランニング時のエネルギー源となる糖質や、汗などにより失われてしまうミネラルの補給もできる『アイソトニック』飲料がおすすめです。
一方でランニング中に汗を大量にかくようなときは、水分と同時に電解質も失われて体液の浸透圧も低くなっているため、『ハイポトニック』飲料のほうが素早く水分を吸収することができますよ!
走る前のプレクーリングを兼ねた水分補給や、ランニング中の補給では使い分けるのがおすすめです。
ちなみに…スポーツドリンクを薄めて飲む人がいますが、これはお勧めできません。せっかく身体に吸収されやすいよう計算されている糖質と電解質などの成分が薄まってしまうからです。

普段はダイエットや冷え対策などで常温のドリンクを飲むのを習慣にしている人は身体を冷やすことに抵抗を感じる方もいるかもしれませんが、特に暑い夏もしっかりトレーニングを行いたいときには深部体温の過度な上昇を防ぐことがポイント。このような運動前に身体を内側や外側から冷却するプレクーリングを取り入れたり、またランニング中の水分補給では「身体の内側から冷やす」目的のために冷やしたドリンク(5~15℃)を摂取するのがおすすめです。


——ありがとうございます! プレクーリング、ぜひやってみようと思います。これで、苦手な夏場のトレーニングも体力を長持ちさせたい!


「暑さに負けない身体」は普段から作れる!

F:暑さに負けずにしっかりトレーニングを行うために、暑さに身体を慣らす暑熱順化、運動前に身体を内側・外側から冷やす“プレクーリング”とお話ししてきましたが、『水分補給』も非常に重要です。というと、“走るときの水分補給”にまず目が行きがちですが、普段の食生活からも「暑さに負けない身体」を作っておくことができるんですよ。

まずは水分補給の方法としては、意外かもしれませんが『食事』も大切。食事はエネルギーや栄養素を摂取するのはもちろんですが、1日に必要な水分の約半分近く(約1000ml)は食事から摂取したい量なんです!パンやごはん、肉や魚、野菜や果物などの食品にも水分は含まれています。ごはん(茶碗1杯)と味噌汁(お椀1杯)、お浸しといった組み合わせで約400ml近くの水分を摂取できます。

スープや味噌汁、果物や野菜などの水分が多く含まれているものを食事に取り入れましょう。また、基本的なことですが3食の食事をしっかりとることも水分補給の意味からも大切です。さらに、食事以外での『飲み物』からの水分補給としても、別で1日1200mlは欲しいところです。(走るときはさらに+αで必要!)

——結構な量ですね……! 朝食ではいつもパンをコーヒーで流し込んでいまして……、仕事中もコーヒーは何回も飲みますよ。夜はビールも飲むし。

F:コーヒーのようなカフェインを含む飲料も、近年では水分補給になるとする報告もあります。ただ、カフェインの摂りすぎは中枢神経への刺激や心拍数の増加など身体の負担となるため“とりすぎ”には注意が必要です。一方でアルコール飲料は利尿作用で水分が排出されてしまう、またアルコールを分解する過程でも水分を必要とするので、水分補給としてはおすすめしません。

そもそも身体は、1日に約2,500mlの水分が失われています(尿1400ml、便100ml、汗700ml、呼気300ml)。運動をするしないに関わらず、ベースとして食事や飲み物から意識的に水分を摂っておくことで、普段からバテにくい身体で活動することができますよ。起床時、朝食、10時、昼食時、15時、夕食、就寝前、と時間を決めて習慣的に摂るのがお勧めです!

——ありがとうございます! 夏場のトレーニングを充実させるために、走る以外の時間にも実践できることがあるのは目から鱗でした!

F:トレーニング中、トレーニング後の水分補給にも、ちゃんとコツがあるんですよ。次回はそちらをご紹介しましょう!

PART1はこちら
PART3はこちら



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