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糖質はダイエットの敵? ランナーが実践したい糖質コントロール術

2021年3月08日

ポイントは血糖値を急上昇させないこと

ダイエット目的でランニングを始める人も多く、「糖質=太る」というネガティブなイメージを持っているランナーも多いのでは? 近年、低糖質ダイエットが話題になったこともあり、なんとなく糖質制限を試したことがある方もいるかもしれません。しかし、主食を減らした分、ついついお菓子や油物を食べてしまったりしていませんか。そうなってしまっては本末転倒です。

一言で糖質と言っても、主に体内への吸収速度の違いによっていくつかの種類があります。それらを理解した上で、シチュエーションに合わせてタイミングよく摂取することが、賢い糖質との付き合い方です。
食事やトレーニング前後の補食によって糖質を摂取すると、血糖値が上昇し、上昇した血糖値を一定濃度まで下げるために膵臓からインスリンが分泌されます。インスリンが分泌されることで、ブドウ糖(糖質の最小単位)やアミノ酸を筋肉などの各細胞に取り込むことで身体は作られていきます。

このように、糖質は決して悪者ではなく、栄養素を体の中に効率よく取り込むうえでも重要な役割を果たしていますが、糖質、たんぱく質、脂質の3大栄養素のうち、糖質は血糖値を上げやすい特徴があります。ランナーが普段の食事で糖質とうまく付き合うポイントは血糖値を急上昇させないことです。血糖値の急激な上昇は、インスリンを過剰に分泌し、利用されずに余った糖質は体脂肪として蓄えられやすくなります。また、活性酸素が発生して血管を傷めるリスクもあります。次のような食事の摂り方をすると、血糖値の急上昇を招きやすいため気をつけましょう。最近では、同じ食事を摂る場合でも時間帯によって血糖値が変化するとされる時間栄養学も注目されています。



血糖値を急上昇させやすい食べ方

お菓子や清涼飲料水など、精製された糖を多く含むもの
白飯、食パンなど、精製された炭水化物偏重の食事
夜の遅い時間帯にとる食事
長時間の絶食を経ての食事
朝中心ではなく、夜中心の食事配分

いかがでしょうか。該当する食事を摂っていませんか。ここで言う精製された糖とは、糖質の最小単位であるブドウ糖(グルコース)のことで甘みを感じやすく、血糖値の急上昇を招きやすいです。ちなみに、ブドウ糖は吸収速度がもっとも早い糖質の最小単位です。一方、炭水化物とは主に主食に含まれ、糖質と食物繊維に分けられます。同じ炭水化物でも含んでいる糖質の種類にはいろいろな特徴があるため、食品の中身を把握することも大切です。たとえば、白ご飯はでんぷんが中心なので、ブドウ糖に比べて吸収速度は比較的緩やかです。また、ランナーの補食の定番としてもなじみ深いバナナには、吸収速度の早いブドウ糖から果糖、ショ糖などいろいろな糖質の種類が含まれており、血糖値の上昇を抑えつつも即効性エネルギー食としても活躍してくれます。このように、同じ炭水化物でも構成される糖質によって特徴が異なっています。



また、昼食から夕食までの時間が空いたり、夜遅い時間に夕食を摂るような場合は、白飯よりも麦飯や雑穀米、全粒粉パン、うどんよりも蕎麦など、茶色っぽい色をしている精製度の低い食べ物がおすすめです。血中濃度を長時間キープできるため、食事から時間が空いたトレーニング時にも血糖値を維持しやすく、スタミナアップや筋肉のタンパク質の分解を抑制してくれるのでパフォーマンスを発揮しやすいです。


糖質は「補食」としても重要

一方で走る前に素早くエネルギーを補給したいときやトレーニング直後の素早い疲労回復を目的とした糖質補給には、吸収速度の速いものを利用します。例えば運動開始までの時間が短く、素早く糖質を吸収させたい時には、柑橘類やイチゴなどの果物や専用のエネルギージェルなどがオススメです。トレーニング直後は100%果汁ジュースやスポーツドリンク等から素早く吸収される糖質を摂取すると運動での筋肉のタンパク質の分解を抑制することができます。

さらにBCAAとセットで摂取することで筋タンパク質をより作り出すのに役立ちます。
運動後の食事で主食(糖質)、主菜(たんぱく質)、副菜(ビタミン・ミネラル)を摂取することで、筋グリコーゲンの回復や筋タンパク質の合成を促し、身体を効果的に回復させます。夜ラン等のトレーニング後、食事をとるまでに時間が空いてしまったり、夕食が遅くなってしまうような場合は、帰宅するまでの時間にまずおにぎり等の補食で糖質をとり、帰宅後の食事では補食でとった分の主食を減らして、主菜(たんぱく質)や副菜(ビタミン・ミネラル)は主食と分割して摂取するようにしてもよいでしょう。

ランナーの皆さんは、糖質を摂ることを怖がらずに糖質のタイプと摂取タイミングを工夫して、賢く付き合うことが大事です。そうすることで、トレーニングの質が高まり、疲労回復も早まり、パフォーマンスの向上を実感できるでしょう。低糖質ダイエットなど無理な糖質カットをするのではなく、糖質を理解して自分自身の身体で感じることで、これまでよりも一つ上のレベルでランニングライフを楽しめるでしょう。

深野祐子(管理栄養士・ランニングコーチ)



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