スポーツ栄養
SPORTS
筋力アップに必要な栄養素はたんぱく質だけではない…?
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ランニングは糖質や脂質を主なエネルギー源として利用します。体脂肪もエネルギー源として燃やされる可能性が高くなるので、「ランニングを継続して体が引き締まってきた」という方も多いのでは? 一方で、マラソン大会を目指すようになったり、さらにレベルアップしたい! と練習されている方の場合、2時間、3時間と走ることも珍しくないですよね。2時間、3時間…と長時間続けられるランニングは負荷が低く、筋肉のタンパク質の合成を大きく促すほどの負荷がかかりません。それどころか、エネルギー消費量は膨大であるがゆえ、筋肉を分解してエネルギーを生み出すようになり、必要以上に筋肉が分解されてしまう可能性もあるのです(1時間程度のランニングでも筋肉は分解されるといわれています…!)。
ただやみくもに走っているだけでは、筋肉量を減らしてしまう、走りのパフォーマンスが低下する、疲労の回復が遅れる、ケガをしやすい、体調を崩しやすいなどの状態に陥りやすい、ともいえるのです。
走りのパフォーマンスを高めて、質の高い練習を行うためにも、またはケガを予防したりコンディションの良い状態を保つためにも、筋肉を分解しやすいスポーツを行っているということを心得えて、ランナーとして“強い身体”を作っていくことがとても重要です。
強い身体を作るためには、筋肉のタンパク質を合成するスイッチを入れるような運動を行う必要があります。それが、筋トレや高強度のトレーニング(インターバル走等)です。
筋トレや、高強度のトレーニングによって、筋肉が強く収縮することや運動が与える筋肉への刺激によって、筋肉は傷つき壊されたような状態(分解)になりますが、同時に修復する力(筋タンパク質合成)が高まり、分解した状態を上回ります。
この筋タンパク質合成が高まっているタイミングで「栄養補給」と「休息」を適切にとることで、より強い身体が作られていきます。これが『超回復』と呼ばれる、強い筋肉が作られていく仕組みです。
トレーニング後の栄養補給や休息(睡眠や休息日)が十分でないと、疲労した状態が続いたままハードなトレーニングを継続していくと、免疫力が低下したり体調を崩したり、風邪を引きやすくなるといった危険性(オーバートレーニング)もあります。“強い身体”を作るためには、筋トレ等の運動の「刺激」と、適切なタイミングでの食事やサプリメントからの「栄養補給」、そして「休養」のバランスがとても重要です。
身体づくりや筋力アップに最も大事な栄養素はたんぱく質ですが、まずは運動を行うために消費してしまった糖質やたんぱく質などをしっかりと補い回復させたうえで、さらに筋肉の修復・合成に必要な量を摂取することが大切です(筋トレや高強度のトレーニングでも、長時間や高負荷の場合は筋肉のタンパク質が分解されます)。
また、筋肉はたんぱく質だけで作られるわけではありません。たんぱく質は「炭水化物」とセットで摂ることで身体に吸収されやすくなり、たんぱく質を代謝するのには「ビタミンB6」、筋肉の材料になるコラーゲンを作るのには「ビタミンC」が必要になります。
このほか、筋肉のたんぱく質の合成を促す「ビタミンD」も重要です。筋トレやスピードトレーニングなど無酸素的な運動をすると、筋肉の修復に役立つ成長ホルモンとテストステロン(男性ホルモン…女性も男性と比べると少量ですが分泌されます)が分泌され、筋タンパク質の合成を促します。ビタミンDはこのテストステロンの分泌を促進する働きや、筋タンパク質の合成にも関わることが分かり、身体づくりの観点から見直されています。
●身体づくり、筋力アップに必要な主な栄養素
・たんぱく質 | … | 筋肉の材料になる一番大事な栄養素 |
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・炭水化物 | … | たんぱく質とセットで摂ることで吸収がよくなる |
・ビタミンB6 | … | たんぱく質を代謝するのに重要 ex. 青魚(まぐろ・かつお・さばetc)、レバー、鶏肉等 |
・ビタミンC | … | たんぱく質とともに筋肉の材料になるコラーゲンを作る ex. 緑黄色野菜(パプリカ・ブロッコリー・菜の花etc)、果物(キウイ、いちご、柿、みかん等、いも類(じゃがいも、さつまいもetc) |
・ビタミンD | … | 筋肉のタンパク質を合成する ex. 魚(鮭、いわし、しらすetc)、卵、きのこ(まいたけ、しめじ、しいたけ)など |
このように必要な栄養素はたくさんあるのですが、大前提として、食事によるエネルギーが満ち足りている状態が必要です。極端な食事制限をして「たんぱく質」だけを摂っても、筋肉づくりに効果はありません。1日3食でエネルギーをしっかり確保しましょう。
朝はトースト1枚、お昼はコンビニのおにぎりなど、主食に偏った食事では、そこに含まれているたんぱく質も効率よく身体の中で利用することができません。夕食でたんぱく質をしっかり摂ろうとしても、1回の食事から筋肉の材料となるたんぱく質を体内で利用できる量は約20~30gと限度があります。やはり、3度の食事でバランスよく摂ることが大事。朝は納豆ご飯でもいいですし、ハムチーズトースト+ゆで卵でもたんぱく質を摂れるので意識してみてください。
忙しいときはプロテインのサプリメントを活用するのもおすすめです。以前はボディビルなどのイメージが強かったプロテインですが、最近はランナーでも身体づくりのためにプロテインを摂る人が増えてきました。BCAAサプリが筋肉のタンパク質の分解を止め、修復のスイッチを入れるのに対して、プロテインは筋肉の材料そのものを補給するという違いがあります。食事ではたんぱく質をうまく摂れない人におすすめします。
監修/深野祐子(管理栄養士・ランニングコーチ)