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週一スピード走は月間走行距離100km増と同効果!

2026年5月01日

※本記事は『ランナーズ2026年7月号』掲載内容になります。

写真:AP/アフロ
写真:AP/アフロ

4月20日に開催されたボストンマラソン。第130回を迎えた今年は約2万9000人が参加し、ケニアのジョン・コリル選手が2時間1分52秒の大会新記録で優勝した。ボストンマラソンにエントリーするためには、男性45~49歳・3時間15分、女性50~54歳・3時間50分など主催者が定める年代別・性別の資格基準をクリアする必要がある。今年、そんなボストンマラソンの参加者(2022年)を対象にしたトレーニング調査の結果が報告された。それは「レース記録は、走行距離に加え〝スピード練習の回数〟と強く関連している」というもの。記録向上を目指すランナーはやはりスピード走を実施しており、スピード走は、やはりマラソンに有効だったのだ――。


第130回ボストンマラソン
4月20日(アメリカ)
男子優勝 ジョン・コリル(ケニア) 2時間1分52秒(大会新)
女子優勝 シャロン・ロケディ(ケニア)2時間18分51秒


ボストンマラソンの参加者データが証明


間違いなく効果あり
週一スピード走を開始しませんか?

ボストンマラソン参加者のトレーニング調査結果を踏まえて、兵庫県立大学の森寿仁先生が、春先からスピード走を実践することの有効性を解説します。

もり・ひさし
兵庫県立大学環境人間学部准教授。専門は運動生理学、トレーニング科学、体力科学

参考文献
DeJong Lempke, A. F., Ackerman, K. E., Stellingwerff, T., Burke, L.M., Baggish, A. L., d’Hemecourt, P. A., Dyer, S., Troyanos, C., Saville,G. H., Adelzadeh, K., Holtzman, B., Hackney, A. C., & Whitney, K. E.(2025). Training Volume and Training Frequency Changes Associatedwith Boston Marathon Race Performance. Sports Medicine.
https://doi.org/10.1007/s40279-025-02304-4


4月を迎えると新年度とともにマラソンシーズンもひと段落。春はマラソンのオフシーズンとも言えます。この期間はシーズンの疲れを癒し、次に向けての目標設定を行う時間でしょう。一方で、春の時期にマラソンシーズンで作り上げた土台をしっかりと維持しながら、着実にマラソン能力を上積みできるか、それが秋冬の本命レースでの自己ベスト更新の鍵を握ります。そこで本記事では春に行うトレーニングとしてのスピード練習の有効性について解説します。

今年、海外の著名なスポーツ科学の学術誌『Sports Medici ne』に、2022年のボストンマラソン参加者約900人を対象とした過去1年間のトレーニング内容に関する大規模調査結果が報告されました。対象ランナーの平均レースタイムは男性で3時間35分、女性で3時間53分、平均月間走行距離は男女ともに260㎞程度でした。 調査の結果、レースタイムには、走行距離(練習量)に加え「クオリティセッション(質の高い練習)」の回数と強く関連していることが明らかとなりました。なお、この研究で定義されるクオリティセッションとは、インターバル走、テンポ走、ファルトレクといった「スピード練習」に相当するものでした。


本番12〜4カ月前もスピード走が重要

この研究で興味深い点が、レース前(4カ月前〜本番)だけでなく、日常的なトレーニング期である12〜4カ月前のトレーニング内容にも着目して分析している点です。その結果も同様に、走行距離だけでなく、スピード練習の回数がレースタイム短縮に重要であり、週に1回のスピード練習の追加によって17分のレースタイムの短縮が見込めるというものでした。対して、月間走行距離は、10㎞増えるごとにレースタイムが1.5分短縮するとの結果でした。よって理論上は、週に1回スピード練習を追加することは、月間走行距離を約100㎞追加することと同等のタイム短縮が見込めることになります。そもそも、スピード練習の効果として、最大酸素摂取量とランニングエコノミーの向上が挙げられます。最大酸素摂取量は車でいうと排気量のようなもので、ランナーのエンジンの大きさを表す持久力の土台となる指標です。Milanovicらの複数の研究をまとめたメタ分析(複数の研究結果〔学術論文〕を統計学的に統合して分析を行う手法)によると、高強度インターバルトレーニングは、一定強度で実施する持続的トレーニングと比較して、最大酸素摂取量をより向上させることを報告しています。また、ランニングエコノミーは車でいうと燃費に相当し、ランニングの効率性を示す指標です。González-Mohínoらのメタ分析によると、1分を超える長めのインターバル走がランニングエコノミーをより向上させうることを報告しています。したがって、スピード練習は持久力の土台を大きくするとともに、効率的な走りを身につけるトレーニングと言えます。

では春から実践するという点についてです。前述のように、日常的なトレーニング期におけるスピード練習の重要性に加え、マラソンのトレーニングサイクルからも春の季節はスピード練習を導入しやすい時期です。夏期になると気温が上昇し、運動時の体温が高くなります。特にスピード練習はジョギングよりもエネルギー需要が大きくなり、体内の熱産生も高まります。結果として体温上昇が起こりやすく、スピード練習の質が落ちてしまいます。秋から冬は、気候的にはスピード練習に適してきますが、本番のレースに向けた実戦的な距離走やレースへの参加が多くなるため、身体の疲労に配慮しながらトレーニングを行う必要があり、スピード練習を実施するタイミングが難しくなってきます。春シーズンはこれらの制限がなく、気候的にもスピード練習を実施するには最適なシーズンと言えます。「スピード練習はきついので、やりたくない」と考えるランナーが多いのも事実です。しかし、効果があることは間違いなく、春先からのスピード練習の実践が秋冬のマラソンに繋がるのも事実です。来シーズンの目標に向かって、今からスピード練習を実践してみませんか?


週に1回のスピード練習追加により見込めるレースタイム短縮への効果

スピード練習を週に1回追加
※月間走行距離は10㎞増えるごとにレースタイムが1.5分短縮

月間走行距離を約100㎞増やすのと同等の効果!


調査概要
対象:2022年ボストンマラソン参加者約900人
対象者の平均レースタイム:男性3時間35分、女性3時間53分
対象者の平均月間走行距離:260㎞程度
内容:レース前(0~4カ月前)と日常トレーニング期(4~12カ月前)
のトレーニング内容をアンケート調査し分析


ボストンマラソン参加者(本研究対象者)のトレーニング

時期 レース12~4カ月前 レース4カ月前~本番
週の平均ランニング回数 4.95回 5.26回
週の平均スピード練習回数 1.65回 1.83回


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