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47歳で脱サラしてクラブ経営一本に 年間売上1億円を目指す陸上競技クラブ

2026年7月01日

※本記事は『ランナーズ2026年9月号』掲載内容になります。

クラブの年間最優秀選手に贈るトロフィーを持つ楠さん
クラブの年間最優秀選手に贈るトロフィーを持つ楠さん

ランニングで生きていく
NPO法人阿見アスリートクラブ理事長 
楠康夫さん(68歳)

ランニング界を支える人々を紹介する連載。今回は未就学児から大人までの陸上教室やイベントを運営するNPO法人阿見アスリートクラブ理事長の楠康夫さん(68歳)です。

写真/小野口健太・本人提供 文/吉田誠一


「好きな陸上競技とビジネス経験を生かして持続性のあるクラブ運営に挑戦したかった」

「子どもから大人になるまでずっと、かけっこに夢中になれる環境を提供する」。NPO法人阿見アスリートクラブ(阿見AC、茨城県)の楠康夫理事長(68歳)は活動目的をそう定めている。
未就学児から大人までの陸上教室を催し、小学5・6年生(フルコース)は週3日、中学・高校生(同)は週5日で指導する。週末には阿見町総合運動公園陸上競技場に総勢200人の会員が集まる。通行者に「何かのイベントをやっているのかと思った」と言われるという。

陸上教室の指針は「かけっこが速くなりたいと思う子どもを育てる」。前段階として「子どもたちに身体を動かすこと、汗を流すことを好きになってほしい。遊びの延長線上に陸上というスポーツがあればいい」と考える。
小学生のコースは鬼ごっこやドッジボールも取り入れ、「先に楽しさを教えて、徐々に苦しさを楽しさにしていく」


教室・イベントは多種多様で、つくば市、牛久市などでの出張かけっこ教室、シニア向けの健康教室「アクティブステーション」、誰でも出場可能な「オールカマーズカップ」の開催、阿見町マラソンなどの委託運営を手掛ける。
定期会員は約300人、イベント会員などを合わせた総会員数は年2000人を超える。2000年度に30万円だった総売上(定期練習会、イベント・教室、スポンサー収入など)は、昨年度は6900万円。数年後に1億円突破を視野に入れる。
 
クラブスポンサーに総合化学メーカーのフタムラ化学、土木建設の株式会社諸岡、ブルックスや、ゼリー飲料のオレは摂取す、などが名を連ねる。 「クラブの会員数や、それに関わる親御さんなどのネットワークにメリットを感じて出資を検討していただくケースが増えている」  
競技面では小学生から社会人まで全カテゴリーで全国大会の入賞(優勝を含む)を果たしてきた。「発足以来、後退したと思ったことがないので、『あのときは良かった』と振り返ることもない。いまが一番楽しい」



出世するため28歳で現役引退 47歳でクラブ経営のため退社

クラブを牽引する楠さんは駒澤大学時代に4年連続で箱根駅伝に出場。卒業後はヤクルトで全日本実業団駅伝やマラソンに出場している。  
だが28歳で競技を引退し、社業に専念。「入社時から28歳までと決めていた。競技は継続できる結果を残していたが、社業に集中して、販売会社の役員、社長になりたかった」。選手引退後は、千葉県北部ヤクルト販売(現千葉県ヤクルト販売)などで営業販売、ヤクルトレディの育成に携わった。

阿見AC設立のキッカケは、マラソン大会を控えた当時小学3年生の長男・康平さんと毎朝、走ったこと。康平さんが2位になったことで、友人が「康平君ばかり速くなってずるい、僕も教えて」と集まってきた。
99年に次男の康成さん(20年日本選手権3000m障害2位)も含めた男女11人の小学生を教え始め、00年にスポーツ少年団にアスレッコクラブとして登録。04年にNPO法人阿見アスリートクラブを設立した。楠さんは07年に24年間勤務したヤクルトを退社し、クラブ運営一本に絞った。

「やりたかったのは指導ではなく経営」だという。「陸上ではメシが食えない」と言われた時代に「経営が成り立つ陸上クラブづくり」に取り組んだ。
「自分が好きな陸上競技と、ヤクルトで培ったビジネス経験を生かして持続性のあるクラブ経営に挑戦してみたかった。子どもたちを教え始めて、出世よりも自分が本当にやりたいことに出会えた」

モデルは地域に根ざしたスポーツクラブづくりを進めるサッカーのJリーグ。子どもからシニア、プロまでを対象とし、それぞれを生涯にわたってサポートする体制づくりは、阿見AC発足前の01年から「世代間育成システム」として描いていた。  20年に楠康成選手、飯島陸斗選手らを擁する日本初の中距離プロチーム「AMIAC SHARKS(シャークス)」を発足したことで構想は完成した(楠選手は株式会社SHARKS代表取締役も兼ねる)。

これに伴い、トップ選手が指導するシャークス・アカデミー、パーソナルレッスン、東京マラソン財団公式クラブ「ONE TOKYO」との連携イベントの練習会やタイムトライアルなども開催している。活動エリアが東京、神奈川に広がった。
「もっと市民ランナー向けの事業を展開したいと思っていたところで、昨年度から会員数68万人超のONE TOKYOと連携した取り組みを開催している。開催するイベントに参加すると、東京マラソンなどの出走権や限定アイテムと交換できるマイルが貯まる仕組みで、今後も会員の方に向けたよりよい取り組みを一緒に行いたい」  
阿見ACでは、出身者を中心に職員として受け入れながら人材を育成し、100年続く組織づくりを目指してきた。現在、正職員は8人、アルバイトを含めると約30人が働く。 「25年前に自分が立てた目標はほぼ達成してしまった。クラブとして次に何をしたいかは、康成たち若手メンバーが考えるべきこと」。クラブを成長させた充足感とともに、後進への期待を胸に抱いている。


茨城県で開催したONE TOKYO練習会、阿見ACメンバーがペーサーを務めた
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