※本記事は『ランナーズ2026年5月号』掲載内容になります。
BTRCのチームTシャツを着る倉岡さん
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ランニング界を支える人々を紹介する連載。今回は、家業の貸衣装屋で働きながら13年前BTRC沖縄を立ち上げ、現在はクラブ活動に専念する代表の倉岡弁慶さん(45歳)です。
写真/川上糧・本人提供 文/吉田誠一
ランニングを通じて人と人との縁をつくり、人生を豊かにする。沖縄最大級のランニングクラブ、BTRC沖縄(Break Through Running Club)の代表・コーチを務める倉岡弁慶さん(45歳)はそうした理念を掲げる。
家業の貸衣装屋で働きながら那覇市にBTRCを発足したのは33歳だった13年。「最初から壮大な理念があったわけではなく、小遣い稼ぎのようなものだった」
頭にあったのは「走ることを敬遠している人にランニングの楽しさを知ってもらいたい」という願いだ。「走る」とは、もがき苦しむものという固定観念を取り払ってあげたいと考えた。
当時、おしゃれなウエアで楽しく走る「美ジョガー」が話題になっていた。沖縄の女性ランナーといえば、大会の参加賞Tシャツにバスケットボールのパンツが定番だったのに、大会出場のために訪れた福岡では、美ジョガーと呼ばれるランナーがいたるところにいた。その姿を目の当たりにし、「おしゃれの延長線上にランニングがある」と気づいた。
「ランニングコミュニティーをつくって、そんな楽しみ方を伝えたい。自分なりの楽しみ方を見つければ継続的に走れるのではないか」。その思考をもとに、発足当初は会員が「速くなる」「キレイに走る」を目指した。
現在はレベルごとにビギナークラス、ランナークラス、アスリートクラスを設け、ジュニア、キッズのクラスもある。NAHAマラソンに向けた「3ヶ月プログラム」「直前攻略セミナー」が 恒例のプログラムだ。 AIを学んでホームページの文言を変え、おしゃれなつくりに改修し、SNSを通じた広告のターゲティング精度を高めた効果もあり、会員が140人に増えた。2会場の練習会を合わせると1日に70人が集まることもある。
ここに至る過程で、倉岡さんは「速さを求めている人だけが入会するわけではない」と実感し、ランニングの価値を考え直した。「ランニングは人の心身を整え、人との縁をつくり、人生を豊かにするツールとして機能する」。この考察がいまのクラブ理念につながった。それは、長く競技者として結果を追ってきたかつての倉岡さんにはない価値観だった。
2024年12月NAHAマラソンの際の集合写真
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高校までバスケットボール部員だったが、高校1年で早くもNAHAマラソンを経験している。熱心なランナーの父親が5人の子どもは16歳になってNAHAマラソンの参加資格を得たら出場するという掟を定めていた。父や兄姉を応援しながら「早く自分も走りたい」と望んでいた倉岡さんは初挑戦を4時間2分(グロス)で完走した。
高校を卒業すると北京外国語大学に留学し、一時、ランニングから離れたが、再開後の北京国際マラソンでサブスリーを達成。帰国後は九州一周駅伝に沖縄代表として7度出場。08年NAHAマラソンで自己最高を2時間31分22秒まで更新した。
いまは貸衣装屋の仕事から離れてクラブ運営に専心し、様々な構想を温めている。沖縄の女性が走りたがらないのは日焼けを嫌うかららしい。その課題解決に体育館のランニングギャラリーを使えないかと思案中だ。
那覇に多い転勤族は仕事以外の付き合いを広げにくい。家で一人で過ごすことの多い妻はなおさらだ。「クラブをそういう人たちの受け皿にして、人とつなげてあげたい」その思いは、クラブの枠を超えた活動にも表れている。
一つが「NAHAマラソンアフターパーティー」だ。キッカケは、「大会に一人で参加し、ゴール後も一人で食事をしている人がいるのではないか」という想像だった。クラブ会員に限らず誰でも参加できる催しで、25年は県内外から100人以上が集まり、沖縄民謡ライブを楽しみながら交流した。県外からの参加者が沖縄の宴を堪能し、沖縄のランナーとつながる場になっている。
法人向けの健康経営支援も手掛け、ランニングをチームビルディングに生かす企画を提供している。プロギング、ロゲイニング、駅伝で社員が協力し合い、終了後に振り返りをすることで相互理解を深める。それがランニングの入り口になるかもしれない。12月には企業対抗駅伝を計画している。「ランニングによって個々の人生が豊かになると、仕事も元気に励み、会社の事業効率向上につながる。その結果として沖縄が元気になる。そこにつなげるのが僕の最終目標です」。ランニングの可能性を広げながら、夢を膨らませている。
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