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初マラソン2時間24分(名古屋ウイメンズ6位)の24歳プロランナー 「自分が選んだ道」でロサンゼルス五輪を目指す

2026年5月01日

※本記事は『ランナーズ2026年7月号』掲載内容になります。

25年度全日本マラソンランキング女性24歳で1位の信櫻さん(2時間24分34秒)
25年度全日本マラソンランキング女性24歳で1位の信櫻さん(2時間24分34秒)

ランニングで生きていく
プロランナー 信櫻空(しのざくらそら)さん(24歳)

ランニング界を支える人々を紹介する連載。今回は実業団を退社し、2025年1月からプロランナーとして活動する信櫻空さん(24歳)です。

写真/小野口健太 文/吉田誠一


「お金を稼ぎたいからプロになったのではなく自ら道を切り開いて自信をつけたかった」

信櫻空さんは3月の名古屋ウィメンズマラソンで2時間24分34秒の6位(日本人4位)に入り、ロサンゼルスオリンピック代表を決めるマラソングランドチャンピオンシップ(MGC、27年10月開催予定)の出場権を獲得した。  
川崎市立橘高校時代の19年高校総体1500mで7位、パナソニックに進んで5年続けて全日本実業団対抗女子駅伝を走り、23年日本選手権1500mで3位(4分18秒02)の実績を残した。25年1月にパナソニックを退社し、プロランナーの道を選んだ。


転身のキッカケは23年のメルボルン・トラッククラブ(豪州)での単身武者修行だという。アパートで暮らし、トップクラスの選手と練習を積んだ40日の間に「衝撃的なこと、やったことのないこと、たくさんの気づきがありました」。
練習はクロスカントリーコース、芝生のトラック、砂地など不整地で行うことが多く、その質の高さに付いていくのも大変だった。
驚いたのは、シャーロット・パデュー選手(英国・フル2時間22分17秒)のマラソンに向けた練習だった。
「5000mを軸にしている私と同じスピード、質で倍の量を走っている。それを見たとき、私が描いていたマラソンのイメージが変わりました」と振り返る。

「トラックとマラソンは別物ではない」と気づき、「自分のトラックのスピードをそのままマラソンにつなげていけば、マラソンで結果を残す可能性があるのでは」という思いに至った。
日本に戻ると、すぐに当時の5000mのセカンドベスト(15分32秒)、1万mの自己最高(32分24秒)が出て、成長を実感した。それとともに思考の変革が起きていた。
「外の世界を目の当たりにしたことで、やり切れていない自分に気づき、残りの人生は自分のやりたいことをしていきたいと思い始めました」。
その思いが独立とマラソンでのオリンピック挑戦という決意につながった。


25年1月にプロとして独立 3社とスポンサー契約を締結

独立時点ではスポンサーは不在だったが、25年4月に、むらせホールディングス(米穀販売)と穂高商事(繊維製品製造販売)、26年4月にBRITZ(インクジェット出力による各種サインの企画制作)とのスポンサー契約に恵まれた。
現在は高校の陸上部同期の北村信二さんにマネージャーを務めてもらっている。
「試合出場や合宿手配の事務まわり、練習や遠征先での移動や付き添い。独立してみて、いままでどれだけ人に支えられてきたかが分かりました。いまは、頼れるところは人に頼って、自分のやるべきことに集中するようにしています」

プロ化に際して、「大切にする芯」を忘れないよう記し、後にSNSで公開した。「目標をぶらさない」「自分に集中する」「まずは結果で示す」「どんなときも自分を否定しない、諦めない」 「私は他人に流されたり、不安になったり、ネガティブになったりしがちなので、そこを変えるために綴った。
 
お金を稼ぎたいからプロになったのではなく、自分で切り開いた道に挑戦することで、自信をつけたかったんです」という。 練習場所は目的に合わせて新横浜公園、母校に近い河川敷やクロカンコースを選ぶ。メニューは時折、高校時代の恩師の助言を仰ぎながら組み立てている。
北村さんは「生活が保障されていた実業団時代と違って、一戦一戦が勝負。いまの信櫻は覚悟が違う」と話す。
 
まさに覚悟を決めた信櫻さんは25年5月のアジア選手権、今年1月の世界クロカンに出場。「1500m、5000mのスピードで走れる距離を42.195㎞に近づけていく練習」を初マラソンの名古屋ウィメンズの結果に結びつけた。2時間24分34秒は全日本マラソンランキング女性24歳のトップでもある。


3月の名古屋ウィメンズマラソンでは27年10月開催のMGC出場権を獲得。写真右から3番目が信櫻さん(写真:アフロスポーツ)
3月の名古屋ウィメンズマラソンでは27年10月開催のMGC出場権を獲得。写真右から3番目が信櫻さん(写真:アフロスポーツ)

SNS等では自身の活動の発信を盛んに重ねる。「私自身、プロという形が実業団より優れているとは思ってはいません。でも自分が一歩踏み出した姿を伝えることで、陸上に限らず何かにチャレンジしようとしている人の背中を押したいんです」と考える。  

現在はスポンサー企業との交流も積極的に行う。米穀を販売するむらせホールディングスでは、商品開発会議に出席し、アスリート視点で意見を交わした。また社員向けの体操動画の制作にも協力した。
「結果を求められて当たり前の世界でスポンサー企業の方からは『信櫻さんの姿勢に共感して応援しているのだから、結果が悪いときも、やりきった、楽しかったと胸を張ってほしい』と言われる。本当にありがたいです」

昨年は横浜マラソンのゲストとしてランニング教室で市民ランナーと交流し、刺激を受けた。「本業の合間で走る市民ランナーの方と交流して、ランニングを仕事にできているってすごく幸せなことなんだと改めて気づけました。参加者の方から、『速いですね』『すごい』と言っていただくことが多くて、もっと頑張ってすごい選手にならないと、という気持ちになりました」
6月の日本選手権では1500mと5000mで出場を目指す。「自分が選んだ環境でやりたいことができています」。目標をぶらさず、28年のオリンピックをしっかり見据えている。




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