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アメリカの会社を退き 東北風土マラソン&フェスティバルを発足

2026年2月01日

※本記事は『ランナーズ2026年4月号』掲載内容になります。

参加者に提供している日本酒「澤の泉」を持つ竹川隆司さん
参加者に提供している日本酒「澤の泉」を持つ竹川隆司さん

ランニングで生きていく
東北風土マラソン&フェスティバル実行委員長 発起人会代表 竹川隆司さん(48歳)

ランニング界を支える人々を紹介する連載。今回は、東北風土マラソン&フェスティバルの発起人である竹川隆司さん(48歳)です。


「マラソンの力で、世界の笑顔の総量を増やしたい」

全国各地に数あるマラソン大会の中で東北風土マラソン&フェスティバル(宮城県登米市)は特徴が際立っている。エイドステーション(フルマラソンは20カ所)に並ぶのは青森のりんご、はっと汁、ふかひれスープ、わかめ餃子、ももぴくるす、いぶりがっこ、笹かまぼこといった東北の自慢の食。登米フードフェスティバル、東北日本酒フェスティバルを同時開催し、ランナーと家族や友人が一緒に楽しめる祭典になっている。地元ならではの温かいもてなしが随所に感じられるのも特徴だ。

今年は東日本大震災から15年。実行委員長で発起人会代表の竹川隆司さん(48歳)は「震災からの復興支援を目的に始めた大会なので、4月19日の今回(エントリーは3月20日まで)は節目の意義深い大会」と話す。大会に先立ち、復興の様を振り返る写真展「震災から15年わたしたちがみた東北展」を登米、仙台、東京、神戸で開催している。今回の写真展では、マラソンランナーやボランティア、地元の方々の視点で撮影された東北の姿を紹介し、日本全国や世界とのつながりを見つめ直す機会としている。「見る・知る・味わう」の3テーマで構成され、震災から15年の歩みを多角的に伝える内容だ。

竹川さんを大会開催に向かわせたのは11年3月11日の東日本大震災。4月にニューヨークで教育関連会社の設立が決まっていたため、震災の3日後に渡米すると、タクシーの運転手やホテルのスタッフから「家族は大丈夫?」と心配された。海外の友人からは次々とメッセージが届いた。

「神奈川県横須賀市出身だけれど、僕にとってのふるさとは日本。東北も東京も同じ」その想いでハーバードビジネススクールの同期生と復興支援団体に寄付金を贈ったが、無力感を覚えた。

「目に見える形で復興支援の事業や仕組みづくりができないか、東北に想いを寄せる人たちをつなぐ手段はないかと考えた末、最適なのはマラソンではないかと思い至った」



東北ならではのエイドが用意されている
東北ならではのエイドが用意されている

竹川さんは野村證券に勤務していた04年からのハーバード留学時代に走り始めた市民ランナーだ。ワインを味わいながら走るフランスのメドックマラソンを恰好のモデルに「マラソンと東北の食と日本酒を掛け合わせた大会」を構想。13年末にアメリカの会社を退き、無職となって大会発足に専心した。

定めたミッションは「マラソンで東北と世界をつなぐ」。ここでいう「世界」とは「東北の外」を意味し、大会を通じて東北の風土とFood、人の温かさを発信し、交流人口の拡大を目指した。14年の第1回で1300人だった参加者はコロナ前の18、19年に6800人まで増えた。50%が宮城県内、45%が県外、5%が香港、台湾、タイ、サウジアラビア、アメリカ、オーストラリア、フランスなど海外からという内訳で、今年も200人が海外から参加しそうだという。

25年に将来を見据えて、サステナブル、デジタル、グローバルをテーマに掲げ直した。サステナブルな大会にするため、マイ箸、マイカップの持参を推奨。スタート時間を自由(ハーフは9時から11時。基本的にいつでも許可)にして、駅や駐車場の出入り、トイレの混雑緩和、シャトルバスの台数減につなげた。
大会当日、竹川さんは「会場の雰囲気の温かさを感じる」という。「立ち上げた人間としてはそれが一番うれしい瞬間。ランナー、応援する人、ボランティア、食の事業者がそれぞれの想いで笑顔になる。笑顔の連鎖を目指してきたので手応えを感じる」大会を重ねるごとに運営、協賛営業の地元主導色が強まってきた。人、モノの無償の支援が増えたため、6800人の参加時に6000万円を超えていた運営費が今ではその半額程度までに縮小したという。

ランナーとしての竹川さんは メドックマラソンを8年連続で 走ったほか、ニューヨーク・シティ マラソンなど国内外の大会に出場してきた。その体験を踏まえて「マラソン大会は社会活動、地 域活動を支えるエンジンになりうる」と語る。

「人生の大切な一部」として大会に携わるとともに、株式会社 zero to one 代表取締役CEO として教育・研修のオンライン教材の開発・提供を手掛ける。 仙台を拠点に起業家を育成・支 援する一般社団法人IMPACT Foundation Japan の代表理事 にも就いている。

zero to one のミッションは 「社会とともにイキイキと生き 続ける力を引き出す」。それは東北風土マラソンが目指すものとつながる。「最終的には世界 の笑顔の総量を増やしたいんで す」。コロナ後、走る頻度が落ちたというが、5歳、3歳の息子とランニングをエンジョイし、心を満たしている。

写真/小野口健太・本人提供
文/吉田誠一




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