※本記事は『ランナーズ2026年3月号』掲載内容になります。
台湾サンダルでフルマラソン3時間5分17秒(24年別大)をマークした阿部さん
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ランニング界を支える人々を紹介する連載。今回は台湾サンダルを販売する小部本舗代表の阿部雅哉さん(54歳)です。2024年は台湾サンダルをはいてフルマラソン3時間5分17秒の自己ベストをマークしています。
ランナーの間で「台湾サンダル」の認知度がじわじわと高まっている。裸足に近いはき心地のワラーチと違ってクッション性があり、かかとを包むヒールカップが付いているので、シューズに近い感覚で走れる(ない型もある)。
日本でこのランニング用サンダルを広めているのは、小部本舗を営む阿部雅哉さん(54歳)。売り文句は「軽くて(25〜26㎝で120〜130g)、サッとはける。雨の日も足が蒸れず、皮膚やツメのトラブルも防げる。足指の筋肉が使えて故障防止になる」
阿部さんは11年の加古川で初めてフルマラソンに挑み、3時間39分42秒を記録した。はいていたのは、普通のランニングシューズで「まさかサンダルで走るようになるとは思わなかった」。シューズでの自己ベストは15年の福知山の3時間28分33秒だ。
化学薬品メーカーに勤めていた阿部さんが台湾サンダルと出会ったのは16年からの台湾駐在時代。現地のランナーがサンダルで走っているのに興味を抱き、自分も試した。
はき続けるうちに、その快適さに魅了された。帰国後の21年に台湾でシェアをほぼ独占する龍峰開発有限公司の正規代理店として日本での販売を開始した。元々の商品名は「母子鱷魚」(ワニの母子)だが、阿部さんはシンプルに「台湾サンダル」と名付けた。当然ながら、発売当初は日本で知られておらず全く売れなかった。
「参加した大会を台湾サンダルで走ったり、試着会を開いたり。露天商のようなこともしていた」。当時もいまも、頼りは口コミだ。
販売に奔走するとともに、台湾サンダルで自己ベストを更新し続け、その効力を実証してきた。通勤ランで月間走行距離がかつての2倍(400㎞)に延びたこともあるが、24年の別府大分で3時間5分17秒を記録。シューズでの自己ベストを23分も上回った。
23年の水都大阪100㎞を9時間46分46秒で走り、この商品の超長距離への対応力も示した。「台湾サンダルで走ることでフラット着地になり、身体への負担が少ない走り方が身に付いた」と話す。
台湾サンダルの存在が一気に知れ渡ったのは、24年2月の熊本城マラソンをサンダルで走ったランナーを地元テレビが取り上げてから。短縮版が全国ネットで放映されると、その反響で爆発的に注文が入った。
「何千足も注文がきたので夜を徹して発送作業を続け、これでは身体がもたないと思ったので注文を止めるほどだった」。それまでは副業だったが、軌道に乗った24年4月に化学薬品会社を離れ、サンダル販売を本業とした。
「本当は定年後に趣味程度でできたらと思っていたけれど、反響があったので思い切ってやってみようと思った。会社の同僚に誘われて始めたランニングがこんなかたちで仕事になるとは思わなかった」
販売する台湾サンダルやサンダル用足袋型ソックス
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神戸に店を構え、ネット販売もするが、軸はマラソン大会の会場近辺での販売会だ。価格は税込4000円前後。サイズは22.0㎝から27.5㎝。日本限定カラーも含めて11色。阿部さんによると耐久距離は1000㎞程度という。トレイルランニング用や、サンダル向けの足袋型ソックスも売る。
20年の台北マラソンの上位1000人の着用シューズ調査で台湾サンダルは74人のアディダスに次ぐ4位の45人だった。台湾ではヒールカップのないタイプが主流だが、阿部さんはかかと付きの方が走りやすいと、自身で試した経験にもとづいてランナーに勧めている。
鼻緒に当たる部分が痛くなるのではと気になるが、素材が柔らかいので、適したサイズを選べば問題ないという。
「大き過ぎても走りづらいので、購入時に試着をしたほうがいい。サイズは足の実寸が目安で、シューズより1㎝程度小さいものになる。サンダル自体に個体差があるため、同じサイズでもフィット感が異なる」
愛用者が増え、24年から大阪城公園で自身が開く台湾サンダルマラソンには50〜100人が参加。オンラインイベントで台湾サンダルの月間走行距離を競った25年8月は400人がエントリーし、トップは1000㎞を記録した。
25年のおきなわマラソンでは横尾奈月さんが2時間55分51秒で走り、一般女子の1位になった。阿部さんの調べでは、これが男女を通じた台湾サンダル日本最高記録。100㎞以上を走るウルトラランナーにもユーザーが増えているという。
「一度試すとリピーターになって、知り合いに勧めてくれる」。阿部さんは台湾サンダルで大会を走り、撮影した他のサンダルランナーの動画や写真をSNSで盛んに発信して、台湾サンダルランナーのコミュニティを着実に広げている。
「いまは関西を中心に販売しているが、今後は関東のランナーにも手にとってもらえるよう試着会を増やしたい。商品の快適性を広めて、いずれは『台湾サンダル』専門店を全国に展開したい」
写真/小野口健太 文/吉田誠一
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