※本記事は『ランナーズ2026年2月号』掲載内容になります。
自身の個展を開催する秋山さん
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ランニング界を支える人々を紹介する連載。今回は大会やランニングクラブの公式イラストやグッズデザインを手掛けるイラストレーターの秋山桃子さん(30歳)です。
写真/松崎竜也、大会事務局 文/吉田誠一
TOKYO ROKUTAI FESや富士山クライムランをはじめとしたランニングイベントを飾るチャーミングなイラストがランナーの目を引きつけている。描かれた世界はポップで温かみがあり、キャラクターの表情や動きがイベントの高揚感や期待感をより膨らませている。
作品を手掛けるのは元実業団選手のイラストレーター、秋山桃子さん(30歳)。大学時代の友人に描いたイラストを「豆粒みたいでかわいい」と言われたことから、mameko と名乗っている。
その活動は多岐に及ぶ。今年9月の富士山クライムランではゼッケン、参加賞のトレーナー、ソフトカップをデザインしたほか、会場の装飾でmameko の世界をつくり出した。
「大会のコンセプトを聞いたうえで制作を始める。富士山クライムランのメインキャラクターはあえて縁取りのないイラストで自由な感じを出した。キッズの部もあったので、配色はカラフルにして楽しい雰囲気が出るように。いまから富士山を走るワクワク感を演出したかった」
11月に都内で開催されたウォーキングイベントのSunrise to Sunset Walk では太陽をメインにしたイラストを描いた。
「日が昇る前にスタートし、日が暮れる頃にフィニッシュするイベントの特徴を取り入れた。太陽を平面的ではなく、画面から飛び出してきそうな絵にして、楽しさや親しみやすさを出したかった」
完歩賞の鮮やかなブランケットの制作や、参加者のその日の思い出を描くワークショップも開いた。
「走るイラストレーター」として、大阪マラソンの完走お守り、富士山マラソンのステッカー、丹波篠山マラソンの公式キャラクター、ランニングクラブ「BEAT AC TOKYO」や、走るお笑い芸人・がんばれゆうすけのキャラクターをデザイン。スポーツメーカーやファッションブランドとのコラボもあり、個展も開く。
「知り合いのランナーのつながりもあって、年々仕事が増えている。納期前は忙しくて走れないこともあるけど、朝走ってから仕事をすると、作業が捗る」
秋山さんが描いた富士山クライムランのイラスト(大会公式サイトより)
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秋山さんがいまの仕事につながるランニングに心を奪われたのは中学1年でのこと。テレビで東日本女子駅伝を見て「地元の神奈川県代表でこの大会に出たい」と憧れた。通っていた中学になかった陸上部をつくってもらい、ランニングクラブのコーチらの支援も得て、2、3年時に念願をかなえた。
白鵬女子高校(神奈川)では2度、インターハイに出場。1500mでは2年で8位、3年で5位につけた。全国高校駅伝も2度、走っている。高校卒業後は筑波大学に進学したが故障に泣いた。
「このままでは終われない。オリンピックや世界選手権を目指したい」という思いで実業団のユニバーサルエンターテインメントに進んだ。
17年からは3年連続でクイーンズ駅伝に出場。19年の5000mの記録会で15分51秒29の自己ベストを出し、20年の青梅マラソン10㎞を33分29秒で制したが、「理想と現実の差に苦しんだ。世界大会に出るというイメージが湧かなくなり、走る意欲が落ちていった」。悩んだ末、25歳の20年11月に退団、退社した。
その実業団での苦悩がアートの道を開いたとも言える。「鬱のような状態になったとき、母に指を動かすといい」と言われ、指輪づくりを始めた。元々、ものづくりが好きだったということもあり、21年から転職先の一般企業に勤めつつ1年間、専門学校でグラフィックとファッションを学んだ。
「経験が足りないというのは分かっていたけれど、イラストレーターとして活動してすぐに個展を開いた。創作を重ねるうちに自分のテイストが定まった」
当初はアルバイトも掛け持ちしながらだったというが、現在は専業のイラストレーターとして活動している。
「イラストには正解がない。自分が満足するものを自由につくれる。選手時代の陸上競技は数字がすべてだったけれど、イラストはそうじゃないから楽しい」
評価は見る者の感性や感情に委ねられる。「理屈抜きで『なんか好き』とか『元気になる』と言ってもらえるとうれしい。人の心に残るものをつくっていきたい」
不思議なもので、引退してから再びランニングが楽しくなったという。24年の名古屋ウィメンズで初マラソンに挑み、3時間2分33秒を記録。25年東京で2時間52分0秒のサブスリーを達成した。東京の前はほぼ毎日、20㎞〜25㎞を走った。
「また楽しく走れるようになるとは思っていなかった。実業団を引退して市民ランナーになってから、新しいランニングの世界にふれた。自分でイラストを描いた大会で参加者と一緒に体験を共有できるのがうれしい」
目標は海外で評価されるイラストレーター。「陸上で国際舞台に進めなかったので、今度はイラストで世界に挑戦したい」。自己表現のツールを異にするが、高いところを目指す志は変わっていない。
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